2024.07/31 フェノール樹脂の高次構造
一次構造があたかもフェノールとメチレンとの重合が進行して生成したような構造をしているフェノール樹脂だが、触媒存在下フェノールとホルマリンとの付加反応で生成したモノマーを含むオリゴマー前駆体のメチロール基が反応し、縮重合して合成される。
ここで、フェノールとホルマリンとの反応は、触媒と反応温度等で制御されるのだが、フェノールのホルマリン付加体が1種類ではなく、多種類の混合物となる。
酸触媒が用いられた場合は、ノボラック樹脂となり、レゾール樹脂はアルカリ触媒で合成されるが、それぞれのフェノール樹脂前駆体の構造を合成時の反応で1種類に制御することは困難である。
すなわち、ノボラック樹脂もレゾール樹脂も、その硬化後の高次構造の正確な情報を前駆体から得ることが難しく、その結果物性制御は、プロセスと原料管理で行うことになる。
難燃性について品質管理活動により、LOI値の偏差で1以内に追い込むことは可能だが、一般の樹脂は、0.5以内で管理できることを考慮するとこの偏差は大きいと言える。
問題は、フェノール樹脂前駆体のスペックをどうするかであるが、これはフェノール樹脂メーカーのノウハウに依存することになり、40年近く前はそのメーカー間の力量に大きな差があった。
あるメーカーAとゴム会社は契約を結び、高防火性天井材の開発を行ったのだが、M社の難燃剤が添加されていないフェノール樹脂発泡体の防火性能と同等の発泡体を得ることができなかった。
リバースエンジニアリングにより、前駆体の品質制御が重要ということを理解できたが、A社にはそのような制御技術が無く、それゆえ難燃剤を添加して防火性能を補わなければいけなかった。
M社のフェノール樹脂は、ソフトセグメントがほとんどないのだが、A社のレゾール樹脂を使用してフェノール樹脂発泡体を合成するとソフトセグメントが5%以上必ず生成した。
このソフトセグメントの量が防火性能に影響していると推定されたのだが、レゾール樹脂を硬化させる反応をいろいろ検討してもM社のように5%以下とすることができなかった。
すなわち、レゾール樹脂合成条件まで踏み込んで研究しなければ高防火性天井材開発を難燃剤無添加で開発することは難しかった。
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