2024.08/10 コンピューターサイエンス(3)
目の前の現象をシミュレーションしたい時に二通りの方法がある。一つは仮説を立てて、仮説に沿った数学モデルを組み立て、そのモデルが現象とうまく一致するかどうか証明してから用いる方法と、仮説を立てずに現象のふるまいをそのままコンピューターの中で実現するアルゴリズムを考える方法である。
両方ともコンピューターを用いるが、仮説の有無で科学と非科学に分かれる。前者は科学の方法と呼べる場合もあるが、後者は仮説が無いという理由で非科学的な方法となる。
前者の事例として、レオロジーにおけるダッシュポットとバネのモデルがある。材料の構造を仮説に用いて、ダッシュポットとバネのモデルを組み立て、その微分方程式を解きながら、数学モデルを導き出す方法は、仮説がありながらも、高分子分野では非科学的方法と呼ばれている。緩和現象をこのモデルで説明できなかったからである。
今では後者の方法の一つと見なされている。コロナ禍では8割おじさんと呼ばれた科学者が前者の方法で計算し、クラスターの予測などしていた。ただし、このときの説明を聞いていて、科学と呼ぶには大変怪しい方法であると感じていたが、誹謗中傷と誤解されるといけないのでこれ以上書かない。
すなわち、前者の方法で科学的と信じていても、マッハに従えば非科学的になってしまう場合があるのだ。AIを用いる方法も含め、新帰納法と表現されている人もいるが、無理に科学的方法としないで非科学的であると注意しながらそれぞれの方法を用いる方が悪影響が少ない。
人類が自然現象から機能を取り出すときに、その機能が科学的に完璧である必要はない。ロバストの高いことが重要なのだ。iPS細胞を創り出す方法は非科学的に考案されたが、科学の場で実績が積み上げられている。
ヤマナカファクターを見出すための最初の24個の遺伝子は、コンピューターサイエンスで見出され、そこから4本を選び出すときには、科学の禁じ手「あみだくじ方式」を採用している。あっぱれ!
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