2024.08/13 夏休みの自由研究が世界的発見へ
ニホンオオカミの剝製を発見した論文の筆頭に小学生の名前が、という記事を読んで、小学生をサポートされた国立科学博物館主幹川田氏と山科鳥類研究所研究員小林氏に頭が下がる。
また、この二人のサポートを受けながら論文にまとめた小学生の知力もすごいと思う。ただ、当方が最も凄いと思うのは、主幹川田氏が筆頭とならず、小学生を当然のように筆頭としている点である。
それは、以下の経験からありえないことと思っていたからである。ゴム会社で30年事業として行われ2018年に(株)MARUWAへ譲渡され今も承継されている高純度SiCの合成技術がある。
この製造方法に関わる反応速度論の研究は、前駆体の品質管理(注)のため当方単独で企画から研究の完成まで行われ日本化学会で発表された。それがきっかけで某国立大学で学位授与の話を当方は頂いた。それは、電気粘性流体の開発でゴタゴタの始まった頃である。
高純度SiCの合成技術研究は1985年に終え、焼結体の研究も終えた頃で、炭素だけでホットプレスできることやヒーターの開発なども完了し、住友金属工業とのJVをスタートもしていた。
新たに就任した研究開発本部長は、JVも立ち上がり、研究開発がひと段落したのだから電気粘性流体の研究を事業として立ち上げるように命じてきた。
そこで、否定証明されて解決できないとされた耐久性問題を一晩で解決するとともに科学的にはその機構が不明だが、電気粘性流体を実用化させた傾斜機能粉体はじめ3種のメタマテリアルを開発している。
その結果、当方含め3人の研究員が転職するような事件が起きたのだが、そのようなときにありがたい話と喜んだのが甘かった。命じられるまま提出したデータを用いて、その大学の助教授が筆頭となった反応速度論の論文を当方の承諾なく出されている。
その助教授は、それまで高純度SiCの開発に全く無関係だった。その研究が完了した時でもゴム会社との接点は無かった。当方が学会発表してから、生まれた接点である。
学位を授与するためには大学との研究履歴が必要だから出した、と事後に説明を受けたが、この研究に関しその後の国際会議等の招待講演をこの助教授は当然のように当方に承諾なく受けている。
当方が転職後、この大学の他の先生から転職先からも奨学寄付金を持ってくるように言われたので、泣く泣くこの大学で学位を取得することをあきらめている。
その後、中部大学から温かい支援が得られ、学位審査料だけで学位を取得できたのだが、この経験は企業研究者の学位について問題を提起したものだと今でも思っている。
このような経験があったので、このニホンオオカミの論文の話は、大変清く素晴らしい記事として心に残った。このような若い人を育てようとする研究者が多ければバブル崩壊後の日本は早く立ち直っていたのではないか。
(注)高純度SiCの製造方法は、無機材質研究所留学中に4日間で完成している。生産もほぼこの時の研究で見出された合成条件で行われている。この時、前駆体の均一性をどのように証明するのか、課題として残った。当方は、均一素反応で反応が進行することを示すために、留学修了後、2000万円かけて、2000℃まで1分で昇温可能なレーザー加熱の熱天秤を開発し、これで速度論の研究を行い、会社から発表許可を頂いて日本化学会で発表している。ゆえにこの研究がいつどこで行われ、誰が関わっていたのかを示す証拠がすべてそろっている。時間ができたときに、当方の12年間のゴム会社における研究開発の体験を書く予定にしているが、研究の成果はどのように評価されるべきなのかについては、その体験談で詳しく書く予定にしている。
カテゴリー : 一般
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