2024.10/31 静かな退職
アメリカから伝わったと言われている表題の言葉がはやっているそうだが、当方が社会に出て12年勤務したゴム会社の研究所は、無駄な仕事を生産するリーダーが多かった。担当者のFDを会議前になると壊すリーダーまで現れて、これは隠蔽化されたため3人が転職する事件にまで発展している。
当方の経験から申せば、静かな退職者は、無駄な仕事を生み出すリーダーよりもはるかに組織のために害は少ない、と申し上げたい。
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また、ワークライフバランスが叫ばれる今日の風潮では、静かな退職者が増える社会となっているが、静かな退職者を問題とするよりも、無駄な仕事を生み出すリーダーについて対処したほうがよい。
なぜなら、静かな退職者は無駄な仕事をしている可能性もある(注)からで、静かな退職者に対して、リーダーは他のメンバーに対するよりも仕事のマネジメントに気を配らなくてはいけない。
当方が転職した時に、組織に静かな退職者が1名いた。当方がリーダーとなり、彼と対峙することになるのだが、暖簾に腕押しである。人事に相談してもらちが明かない。人事との面接ではうまく人事担当者を丸めこむのである。
人事担当者に対して散々当方を褒めちぎり、仕事をやってます感を伝えている。忙しいグループの仕事を手伝わせてもスキルが無いので、グループメンバーからは、足手まといとなって仕事が増えると断られる。
会社内で有名な人物であり、異動先を探すことができなかった当方は最後に諦めたが、その結果、組織の効率が上がっている。当時は成果主義ではなかったので年功給で本人は仕事など無くても十分満足していたのである。
毎日出勤しては自分の読みたい本を図書室で一日読んで帰宅する「真正さぼりタイプの人物」だった。このような人物に企業としてなすすべがない。
このような人物は静かに本を読んでいるだけなので、組織メンバーの理解が得られたならば、そのままにしておくとよい。草むしりをさせたりしたら労働問題になりかねない。
(注)2005年に単身赴任した時にも退職をまじかに控えた静かな退職者が現場に一人いた。コンパウンド工場建設を決意し、彼に声がけしたところ「面白いからやりましょう」となった。そして1名中途採用で優秀な技術者を獲得し、たった3か月でコンパウンド工場を立ち上げることができた。静かな退職者にはいろいろなタイプがいる。面白い仕事ならば能力を発揮して素晴らしい成果を出してくれる場合もあり、リーダーは静かな退職者の本音を聞く必要がある。本音を聞いてみると、静かな退職者には身勝手に働く意味を捉えている人物とそうでない人物とに分かれる。後者は仕事について十分話し合って決めれば、うまく能力発揮してくれる。まず、本音をよく聞くことである。この話し合いがうまくできないリーダーが多い。当方が早期退職を申し出たときに、ある役員が2011年の新製品に搭載できる環境対応樹脂を好きなように仕事を進め開発してほしいと相談してきた。そこで当初予定を伸ばし、中途半端であるが2011年3月11日(金)を最終出社日にしたいと申し出たところ、その日に最終講演と盛大な送別会を約束してくれた。そして、PC/PETとPET基ポリマーアロイの2品種を開発するのだが、マネジメントの意味を良く理解していた役員である。毎月2週間中国へ出張し実験をして帰国する楽しい日々を最後まで過ごすことができた。当方が退職後この成果は社長賞を受賞し、元部下は記念品のPETボトルを20本送ってくれた。
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