2024.11/05 科学で解けない問題
トランスサイエンスという言葉は50年ほど前にアメリカで使われ始めた言葉だが、日本では科学論がブームでこの言葉は無視された。というよりも、似非科学者が多数誤った科学論を展開し、経営者がそれを信じていた、と言った方が正しいかもしれない。
研究所ブームから10年経過し、企業の研究所がそれなりの体制ができ始めた頃であり、科学、科学と夢中だったのだろう。当方はたまたま研究所に配属されて、トランスサイエンステーマ、高分子の難燃化技術を担当したので、サイエンスに掲載された論文を深刻に考えることになった。
配属された部署では、ダンフレームBという商品が大成功し、大変活性が高い状態だった。そこへ配属されたばかりの当方は水をかけるようなデータを出してしまった。すなわち、難燃性と言われたダンフレームBは、空気中でよく燃える、という実験結果を出したのである。
当時のリーダーは、すぐにそのデータを否定し、当方は科学を知らない人間と叱責した。日本ではトップの国立大学の先生が優れたアイデア技術だとダンフレームBをほめちぎっていたそうだ。
確かに、厳しい建築基準であるJIS難燃2級試験に世界で初めて合格した唯一の発泡樹脂だったので、「規格に合格した」優れた技術と言って良いだろう。
しかし、難燃化規格が欠陥規格だった場合には、事情が変わる。その後この規格は新たな簡易耐火試験に変更されるのだが、当時誰も規格の問題を疑わなかった。
その後、ダンフレームBを採用した建築で火災が発生して問題となり、初めて当方の指摘の正しさが証明されるのだが、当方を叱責したリーダーは、何故かダンフレームBが空気中で燃えやすい、というデータを忘れて、建築基準の見直しをお役所へ提案していた。
火災という現象について、すべて科学で正しい答えを出すことは、今でも困難である。しかし、空気中で燃えやすいかどうかは、マッチでサンプルに火をつけてみればすぐにわかる。これ以上は書かない。
当時は生活の常識が非科学的と言われたのである。「裸の王様」とか「王様の耳はロバの耳」とか子供向けには教訓となる話が多いが。
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