2025.04/16 二軸混練機の性能(4)
これは10年前の話である。中国のローカル企業から、コンパウンド事業を始めたい、と相談があった。日本の混練機メーカーを紹介したところ、価格が高いから中国製で選んでほしい、と言われた。
そこで、UL94-V0合格の配合組成であるPC/ABS原料を用意し、南京にあるコペリオン社とこの会社からスピンアウトした技術者が立ち上げたK社の二社で試作した。
中国には1970年代の日本のように当時混練機メーカーが多数事業を始めていた。大手4社ほど見学し、この2社に絞り、試作を実施したのである。
この2社にした理由は、型式名称は異なるが、同一性能の混練機を比較できたからである。K社はコペリオン社のコピー機を2割ほど安い価格で販売していた。
さらに工場もそっくりであり、比較しやすかった。そこで、300kg/hの吐出量の混練機を用意してもらい、スクリューセグメントを同一にして、ドライ分散した難燃性PC/ABS原料を持ち込んで試作したのだが、驚くべきことが起きた。
コペリオン社の装置では、2条件で製造した2種のコンパウンドそれぞれが、同一難燃性能V0で合格したのだが、K社の二軸混練機では条件を5種類ほど変えても、V2レベルだった。
さらに、引張強度の平均値はスペックを満たしたのだが、衝撃強度はスペックアウトし大きくばらついた。コペリオン社でも衝撃強度に問題があったので、条件を変えて力学物性と難燃性能のスペックを満たすコンパウンドを得たのだが、K社の二軸混練機を用いた場合では、目標スペックを満たすコンパウンドが得られなかったのである。
これは驚くべきことのように思えるが、かつて高分子自由討論会で某社の技術者が、同一メーカー同一型番の二軸混練機で混練したコンパウンドのレオロジーが一致しない問題を発表していたので、当方はさほど驚かなかった。
しかし、ローカル企業の総経理は、高いコペリオン社の装置を購入しなければいけなかったので、当方に日を変えて試作をやり直したいと提案してきた。当方は無駄だから諦めてコペリオン社を購入するように勧めている。
この話には後日談があって、数台購入したコペリオン社の二軸混練機の性能ばらつきが問題となった。これはある条件を少し変えるだけで、揃えることができたが、このような体験話を信じていただけない場合がある。
ところが、これよりも驚く話があるので混練技術は面白い。科学で理解できないトランスサイエンスの世界である。
カテゴリー : 一般
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