2025.09/25 AIと材料技術者(8)
推論については、第一次AIブームで大きな進歩があり、逆向きの推論により特定の問題にコンピューターを使って解を提示できることが示された。
例えば、E.J.Coreyは、1970年ごろ逆合成のアルゴリズムを提唱し、第二次AIブームの時に有機化合物をデザインするためのエキスパートシステムを発表している。
筆者は、この時初めてAIの研究に接し、彼の論文に従い逆合成を行って、シントンとなるジケテンからシクラメンの香りの成分であるゲラニオールの全合成に成功している。
ここで、シクラメンの香りを選んだのは、布施明の「シクラメンの香り」がヒットしていたからにすぎず、合成ターゲットは何でもよかった。
第一次AIブームで成果が出た「推論と探索の方法」について、実際に活用したかっただけである。専門外の難解なAI技術であるが、その成果をブラックボックスとして活用するだけであれば、難しくない。「使い方の手順」を理解するだけで良いのだ。
ちなみに、推論には、科学で使われる前向きの推論と第一次AIブームで検討された逆向きの推論があり、逆向きの推論では、ゴールとなる結論を満たすケースだけ考えればよい。
この逆向きの推論によるアルゴリズムの効率の良さは、1960年代の受験参考書にも「結論からお迎え」と標語化されており、実務から大学入試まで使える範囲は広い。難解なAIであるが、成果を使うだけであれば、その敷居は低い。まず、使ってみることが重要となってくる。
カテゴリー : 一般
pagetop
