2025.09/27 AIと材料技術者(10)
生成系AIは、人間の英知から生まれた多数の論文(データ)を読み込むことで動作している。そのからくりの詳細を知らなくても、データ駆動プログラムで動作しているだけ、と理解できれば少し安心できないか。
人類の希求である、知を機械で処理する具体的姿が現れた今、それに合わせて知のマネジメントを行えばよいのである。技術者が知を活用して新しい機能を生み出すという役割が変わったわけではなく、実用的なAIの登場は、そこに新しい道具が加わった程度のDXである。
突然新規技術の製品が現れると、技術者はリバースエンジニアリングを試みたくなるかもしれない。しかし、DXで出現する多くの新規技術はソフトウェア主体であり、実体が見えないので戸惑うどころか不気味に感じたりする。
科学の体系が完成していない樹脂やゴムのフラクトグラフィーで回答を出してくるAIを恐れていても、AIは今後もさらに進化してゆくのである。
今は使いこなしのコツが必要なレベルではあるが、友達のように接して実務に活用する習慣を身につけておけば、情報の爆発で人知では難しくなってきた知のマネジメントに寄与してくれるのではないか。本記事で紹介したコツで、まず生成系AIを実務で使ってみることをお勧めする。
情報化の時代では、公開された様々な知の断片がインターネット上に散らばっている。そこには、科学の形式知以外に経験知の断片も含まれている。技術の進歩でコンピューターは、広大なメモリ空間とそこにアクセスし情報を整理できる能力を獲得した。
人知では到底扱うことのできない量のビッグデータをいとも簡単に処理できるのは、コンピューターの道具としての優れた機能である。
知の断片を深層学習により関係づける能力について、その活用方法は技術者一人一人の英知にかかっている。今のところ、暗黙知による創造は、人間にしかできない知の活動なので、膨大な形式知を記憶する努力をコンピューターに肩代わりしてもらうぐらいの気持ちで生成系AIを使ってみてはどうだろうか。
これができるようになると、知の体系に目を向けたくなる。ドラッカーは半世紀以上前にその重要性を指摘していた。知識労働者の時代にあって、知のマネジメントの対象の一つとして、ようやくコンピューターが実用的になったのである。
カテゴリー : 一般
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