2025.11/16 始末書
ゴム会社に入社して1年ほどで始末書を書かされた。当事目の前が真っ暗になるほどショックだった。さらに1週間毎朝上司から、始末書は書けたか、見せろ、とあいさつ代わりに言われるのである。
電通の新入社員女性が鬱になり、自死された気持ちはよくわかる。しかし、小生は鬱にもならず、自死もせず、12年間勤めて、バブル崩壊直前に転職している。
この転職では、新入社員が突然辞めて、セラミックス事業を一緒にやってきた年下のセラミックス専門家も半年後転職するというのであわてて当方も転職するという流れだった。
この背景はすでにこの欄でも書いているが、電気粘性流体(ERF)耐久性問題を一晩で解決したところFDが壊れ始める怪談がある。それを研究所はオブジェクト指向ではないが隠蔽化したのである。
それで、新入社員はあまりの環境に驚いて会社を辞めたのだ。当方が写真会社へ転職後、福井大と共同研究を行うことになり、助手になっていた、この新入社員と偶然遭遇する。そして彼のおかげで福井大学客員教授になるのだが、このあたりの話も過去にこの欄で紹介している。
さて、始末書の話に戻る。この始末書は、世界初のホスファゼン変性ポリウレタンフォームの工場試作に大成功したことが原因であり、なぜ当方が始末書を書くことになったのか、その本当の理由を未だに知らない。
ホスファゼン変性ポリウレタンフォームが当時世界初であったかどうかは、Y.Kurachi,T.Okuyama and T.Ohasi,J.Materials Science ,24(1989)2761の論文を読んでいただければ分かる。工場試作に成功してから8年後に発表されたこの論文さえ、世界初と認められて掲載されている。
この論文では、工場試作されたポリウレタンフォームの物性が公開されている。世界初の高分子難燃化技術を企画せよと命じられて、プロトタイプを作ったところすぐに工場試作となり、不眠不休でホスファゼンとイソシアネートからなるプレポリマーを10kgほど合成している。
ゴム会社に存在しなかったホスファゼン合成技術を月給10万円の新入社員で獲得できたことを本来褒めるべき、と今でも思っているが、残業代がもらえないとわかっていても、率先して工場試作に間に合わせるように世界初の化合物を合成したその根性を褒めてくれても良いのに始末書である。
これだけでも当時ものすごく熱くなっていたことを覚えているが、ゆえに始末書を命じられた時のショックは、すぐに怒りに変わった。おまけに業務停止命令も出て、出勤すると図書室にこもらなければいけない日々となったのである。
ただ、図書室は竜宮城で、通い始めて二日目に受付の女性からお茶のサービスが出るようになった。最先端のコンピューターの雑誌があり、オブジェクト指向黎明期の論文を楽しく読んでいた。
この時の体験記が、「科学を超えて:オブジェクト指向とAIが拓く技術のDX」に書かれています。見本を掲載しましたが、是非アマゾン電子ブックを購入してご一読いただければと願っています。転職の原因となったERFの話も書いてます。
カテゴリー : 一般
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