2026.03/06 ラテックスとシリカゾルの複合技術
1990年代にゼラチンを硬く、割れにくくする技術として、コアシェルラテックスが開発された。このラテックスは、シリカゾル粒子1個の表面でラテックスの重合反応を行い、芯にシリカ粒子を抱えたラテックスを合成する技術である。
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すなわち、このラテックスをゼラチンと複合化してシリカゾルの高い弾性率を活かし、ラテックスの柔らかさで靭性を稼ぎ、ゼラチンを硬くても割れにくくする優れた技術である。
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この技術について、特許出願が網の目のようになされており、転職時この技術を凌駕する技術開発が重要なテーマとなっていた。そして数名が新規のコアシェルラテックスの研究開発を行っていた。
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当方は、同じコンセプトの技術を指向しても面白くないから、オブジェクト指向で異なるプロパティーのラテックスを開発したら、と提案したら、それが難しいからコアシェルラテックスを開発している、と否定された。
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コアシェルではなく単純にシリカゾルをミセルにしてラテックスを重合するアイデアはどうかと言っても、コロイド科学のことを知らない素人扱いをされたのである。
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このような問題を考える時に、とりあえず、科学を忘れアイデアやコンセプトを思考実験で練ってはどうか、と言って、ホワイトボードに漫画を描いたら、一人のスタッフが、それなら合成経験があると叫んだ。
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そして新たなシリカゾルをミセルにしたラテックス重合技術で、コアシェルラテックスよりもゼラチンを硬くでき、靭性を1ランク向上できる技術が完成し、写真学会からゼラチン賞を頂いた。
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科学の弊害として、当たり前の技術しか考えない、という問題がある。科学では一つの真理が求められるためで、例えばコアシェルラテックスは、シリカゾルを凝集させない科学的に正しい一つの方法である。
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しかし、ゾルをミセルに見立てラテックスを容易に合成できるのかというと、科学的にはできないという否定証明が容易な解答となる。しかし、ゾルをミセルにしてラテックスを合成できたなら、それは新技術であり、新しい科学のシーズが誕生する。
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科学の時代が、新しい科学のシーズを生み出す時代から、いつの間にか、科学的に正しい技術を、すなわち当たり前の技術を開発する時代になってしまったことに気がつくべきだ。
カテゴリー : 一般
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