2012.11/30 V0を狙う樹脂の難燃剤
樹脂の難燃化技術は、樹脂を産業部材へ応用しようとする時に重要な技術である。ところが樹脂の種類により効果的な難燃化技術が異なる難しい技術である。またその評価技術も万能の評価技術は無く、それぞれの業界で決められた難燃化基準に応じて樹脂が処方される。UL94は評価技術としてかなり普及してきたが、実技評価なので材料の基礎物性値として採用しがたいのでLOIがその代わりに普及している。
LOIは、極限酸素指数法と呼ばれ酸素と窒素を混合したガス中で材料を燃焼させて燃焼挙動を観察する評価法である。評価方法は、自己消火を示す酸素濃度で最小の値を採用する方法ですが、偏差0.5程度で計測値が得られるので、樹脂への難燃剤の効果を表現するのに便利な方法である。
さて、樹脂の難燃性設計を行うに当たり、実技評価としてUL94を対象に考えてみる。電子部品などの内装材としてはV2レベルとしている場合が多いが、外装材になるとV0レベルあるいは5VBが要求される。5VBとはV0と同等かそれ以上の難燃性が要求されるレベルである。樹脂の種類により同等となる場合とならない場合があるが、5VBの方が難燃剤の添加量が多くなる場合が一般的なので5VBの方が難燃性レベルが少し高いと思われる。V0を通過するために要求されるLOIは、25から34となり、これも樹脂の処方により様々にばらつく。スクリーニングするときには、LOIの線形性の高さを利用してUL94との対応表を作り、LOIを基準に処方設計する方法が良く行われる。
樹脂に添加する難燃材の量は力学物性に影響するので少ない方が良いが、V0レベルを狙う場合に、難燃効果の高い難燃剤でも少なくとも体積分率で10vol%程度添加する必要がある。体積分率で表現したのは、難燃剤の種類により比重が異なるからである。体積分率でこのくらい添加すると力学物性では弾性率と可塑性に影響が出るので引張強度とか曲強度の低下が生じる。強度を低下させたくないときには、粒子状固体で分散する難燃剤が選ばれる。この用途では赤燐あるいは三酸化アンチモンとハロゲン系化合物との組み合わせが定番となりつつあるが、ホスファゼン誘導体も最近コストが低下してきたので試しておきたい難燃剤である。多少の強度低下に目をつぶるならばリン酸エステル系あるいは臭素系難燃剤が選ばれる。
環境規制の問題も絡むので、臭素系難燃剤や、アンチモン系処方は注意する必要がある。例えばRoHSでは、アンチモン系処方は問題とされないが、臭素系難燃剤の多くは禁止されている。またアンチモン系処方はRoHSで禁止されてはいないが、自主規制としてアンチモン系を採用しない企業もいる。こうした状況を考えると、V0を達成できる難燃剤として将来の規制も見据えると、ホスファゼン誘導体かリン酸エステルの縮合体、赤燐系とリン系難燃剤以外に効果的な難燃剤が見当たらない。樹脂の難燃化技術開発はあまり注目されていないが、まだまだ開発の余地が多く残っている分野である。
現在コストや力学物性への影響を考えた時に最も汎用的にV0を狙えるのは、と問われるとアンチモン系複合化難燃技術となるが、環境の問題が見え隠れする。業界によっては、すでにリン系難燃剤しか選択の余地のない業界もある。難燃剤メーカーがんばれ!
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カテゴリー : 高分子
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