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2024.08/23 自己実現

材料開発にコンピューターを利用するきっかけは、大学4年の時に在籍した研究室の風土が影響している。そこには分子軌道法で反応経路を評価している研究者がいた。


また、コーリーによる逆合成の考え方も研究テーマではないが雑談で議論されるような風土だった。有機合成の研究室だったが、コンピュータの話題が時々出てきた。


ゴム会社に入社し、情報工学の優秀な卒業生がいて、情報工学とコンピューターについて熱く語っていた。当時は大型コンピューターの時代だったので、FORTRUNを使えることが必要だと言っていた。


1か月半の新入社員実習でタイヤの軽量化について指導された時に、彼の発案で多変量解析でデータ処理をすることになった。以前この時の様子をこの欄で書いているので省略するが、この時の成功体験は大きく、10月に配属されてからもIBM3033を使用していた。


「花王のOAパソコン革命」という本がベストセラーになり、研究所でもOA化を推進するプロジェクトが作られ、上司がOA委員長になった。パソコンを一台も研究所で購入しないでプロジェクトを推進し、アウトプットとして研究所の薬品管理体制を成果として出し上司は高く評価された。


プロジェクトの推進にパソコンが1台も購入されなかった原因は研究所に予算がとられていなかったからである。それで、上司に命じられて当方が80万円のローンを組みパソコンを購入している。


もちろんパソコンは当方の私物となったが、10万円の初任給の時代に80万円のローンの意味が分かる人はプロジェクトメンバーに一人しかいなかった。カローラデラックスが1台買えた時代である。


唯一の理解者は、当方のかつての指導社員だった人である。他のメンバーは、OA委員長の上司も含め、コンピューターを趣味とする人間が購入したいと思っているぐらいにしか考えていなかった。


また、廊下ですれ違ったときの同僚の言葉にも独身寮のパソコンが順調に稼働しているかという挨拶が多かった。だれも、80万円のローンを問題にしていなかった。


その後FD事件が起き、当方含め3人ほどが転職するような状況となっても隠蔽化されたり、転職後社長室乱入腹切り事件が起きたりしている。さすがにこれは新聞沙汰になっている。


今から思い出せば、ビッグモーターのような風土で我慢して仕事をしていた、と感じたりするが、この時ローンで購入したことがきっかけで、毎日がコンピューター漬になった。


もっともローンの負担で休日に身動きできなかったのだが、おかげでプログラミングはじめ情報工学の勉強を当時の学生以上にできる時間が生まれた。


その後起きているDXの先端を走りながら、今年の春にはAIを活用した配合設計について日本化学会で発表することができた。そして、来月は広州で開催される再生材に関する国際会議へ招待講演者に選ばれた。


ゴム会社の12年は楽しい思い出である。地獄に行っても楽しめる術を身に着けた良い経験と思っている。どのような組織でも、それが社会的使命を目指し活動しているのであれば、例え内部が地獄でも自死する必要はないのである。


当方には兵庫県知事がどのような秀才なのか、体験から想像がつく。また、ビッグモーターの常識を超えた活動も当方にとっては、リーダーが腐っていたなら起こりうることと理解できる。皆、ゴム会社の研究所における12年の体験のおかげである。


一番の問題は、過去の多くのリーダー論が誤って理解されたり、リーダー論そのものが偏っていたりしていることだ。そのようなリーダー論を基にした研修では、ビッグモーターのような事件を防ぐことができない。


リーダー論のヒントは、ドラッカーにある。彼はただ一言、「誠実な人をリーダーに選べ」と述べている。兵庫県知事にしてもマスコミに現れたビッグモーターの幹部にしても誠実さは感じられない。

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