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2016.04/16 高分子の融点(4)

以前この欄で高分子を大量の組紐に例え説明したことがある。すなわち、組紐をぐちゃぐちゃにして床に落としてみるとその時3つの構造が観察される、と説明した話だ。
 
紐が規則正しく並んでいる部分(結晶)とそうでない部分(非晶)がおおざっぱにできる。さらに非晶部分をよく見ると密な部分と疎な部分が存在する。
 
ここで非晶部分の密度が疎な部分は、高分子材料が固体状態であっても分子運動しているところで高分子の自由体積あるいは部分自由体積と教科書に書かれている状態である。そして非晶部分で密な部分は分子運動性を失ったガラス状態である。
 
この組紐の束を眺めているといろいろなことが思い浮かぶ。まず、まったく結晶化しない非晶性高分子を合成する、というのは大変なことだろうということだ。逆に結晶化する結晶性高分子は容易に合成が可能と思えてくる。
 
すなわち、全く結晶化しない高分子にするためには、立体的に完全で無秩序な構造の高分子を合成しなければいけない、というイメージが頭に描かれる。逆に、ある一部分が立体的に秩序正しく、化学構造も同一な場合には結晶化しやすい高分子になると想像できる。
 
この組紐実験でイメージされる高分子結晶と実際の高分子結晶の違いは、組紐実験では球晶が得られない点である。これは勝手な妄想だが、組紐に磁石のような凝集力を持たせたら球晶が得られるかもしれない、と思っている。
 
これはなぜ高分子が球晶を作るのかという概略の答えのイメージを提供してくれる。原子のオーダーではかなりの力の場ができているので凝集力がはたらき、それが規則正しければ結晶となり不規則ならばガラスとなると考えても間違いではないし、このような整理は目の前の現象を眺めるときに便利である。
 
余談だが、χが大きいPPSと6ナイロンを相溶させるプロセスを考案できたのは、このような整理が頭の中でされており、それを確認する実験すなわち特殊なポリオレフィンとポリスチレンを相溶化させる実験を事前におこなっていたからである。

カテゴリー : 高分子

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