2016.04/25 高分子の融点(9)
TgからTmの温度領域でも混練が可能ということからTg以上で高分子は流動性を有することがわかる。ただし結晶はTm以上に上げなければ溶融しない場合もある。ここで溶融しない場合もある、と書いたのは、Tm以下で結晶が溶融する場合もあるからだ。
さすがにここまで書くと眉唾でこの欄を読まれる方が多いと思うが、ゴム会社で樹脂補強ゴムの研究開発を行ったときに見つけた現象である。配合や混練条件が重なると溶融しないはずの低い温度で樹脂がロール混錬で溶融する。
実際に扱った系はTPEとNRなどのポリマーブレンドだが、ある配合で本来溶融しないはずの結晶が溶融し、加硫ゴムにしたときに樹脂成分が海となったきれいな海島構造の樹脂補強ゴムを製造することができた。
また10年前の例ではPPSと6ナイロンを混錬する温度についてPPSのTmより低い温度で混錬に成功している。これは一発勝負で混練条件を決めたときの経験談だが、トルクオーバーが二度ほど起きた。しかし、ポリエチレンとパルプの混練で成功体験があったのでチャレンジし続けたら、急激にトルクが下がる条件がTm未満で見つかった。
この混錬温度で大切なことは多成分配合系においてTm以上と以下でコンパウンドの物性が大きく変わる現象が観察されることである。そしてその現象を見ると、Tm以下でも高分子は流動して混錬されていることが理解できる。
このようなプロセシングにおける現象は、無機材料ではどうなのか。Tmと原子の拡散が関係しており、無機の結晶よりも低い温度で焼結を行うためには、低温度で液相を形成できるような助剤を添加しなければいけない。
しかし低温度液相ができると異常粒成長が起きる問題があり、助剤設計が焼結の配合技術として重要になってくる。高分子の世界と異なり、かなり昔から結晶のTmより低い温度で形成される液晶相が議論されてきた。このように無機材料のプロセシング技術においてもTm以下の溶融現象は活用されている。
(注)
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カテゴリー : 高分子
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