2016.05/04 26日の三菱自動車記者会見(6)
5回目の燃費目標設定とその確認方法には役員もまずいと思ったようだが、データに不正は無かったので不正のレポートは無いと説明していた。一方で5回目において平均値の中央値を採用したときには、燃費目標を達成できなかった、とも説明している。そしてこの時は、平均値を取らず、実際に測定された最も低い値を採用し、シミュレーションで29.2を達成できると判断した、と説明していた。
この説明には、今回の燃費不正における三菱自動車で起きた問題と他のメーカーでも起こりうる問題が潜んでいる。すなわち科学と技術というものを正しく理解しておれば、三菱自動車のような問題は起こさないが、これを正しく理解しないで、科学の研究のような感覚でモノ作りをしているとだめである。
科学の研究の様な仕事の具体例として、会見で説明があった燃費の測定方法について。燃費の測定方法は車の輸出先に応じて3通りあるそうだ。アメリカは高速蛇行法、欧州と日本は蛇行法と呼ばれる方法で、欧州と日本は同じ呼び名でも計算の仕方が異なり、前者はn=4の単純な平均値が採用され、後者は最小自乗法により求めるという。
高速蛇行法では燃費が高めになる係数が得られるらしい。また、欧州の方法で測定すれば、すべてで対応可能な燃費水準となるそうだ。これら3通りの計測方法があるので、それぞれの関係を科学的に求め、その結果をプログラムし、コンピューターで計算できるようになっていた。
これまで三菱自動車が日本で販売した車で、日本の規格通り測定されたのは3車種だけであとは、すべてこの換算プログラムで求めてきたそうだ。これがマスコミで「不正が1991年から行われていた」と騒がれている原因である。実際には1992年から高速蛇行法で測定されたデータを蛇行法の値に計算で置き換える方法をとっていた。
ちなみに日本において燃費計算で蛇行法が制定されたのは、1991年である。この蛇行法とは、ある速度でギアをニュートラルにして、その速度が維持される時間を計測する。すると、車の空気抵抗やタイヤの転がり抵抗の寄与した数値が得られる。
蛇行法そのものは、自然界の管理されていないノイズの中で実験を行う実技である。しかし、数値を統計的に処理し、誤差を管理して実験を行えば、科学的に計算で数値を求めることができるようになる。
他の方法についても同様に計算式が求まれば、科学的に計測値間の関係を求めることは容易である。このような仕事の進め方は不正でもなんでもなく、「科学による仕事の進め方」である。ただし、これを行ってよいのは、研究開発段階までで、商品として国に認定を受けるときには、「科学的に結果が分かっている」時でも、愚直に試験を行わなければいけない。
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