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2016.06/05 科学の知識(7)

粘弾性論は、科学の知識がどのようなものか、その姿を学ぶのに良い事例だと指導社員は語る。すなわち、ゴム物性を理解するために粘弾性論を適用して多くの現象を説明できるが、説明のできない現象も存在する。おそらく10年後には粘弾性論で高分子を議論する人はいなくなるかもしれない、と予言されていた。
 
90年代にも粘弾性論で学会発表をされる先生もおられたので、この予言ははずれたが、高分子と粘弾性論という学問との関係を理解するのに指導社員の説明は役だった。
 
しかし、大学で学んだ高分子の知識は合成が中心で、レオロジーに関しては、言葉が一行出てきた程度だった当方にとって、指導社員の朝の座学は新鮮で貴重な体験だった。また、実際に樹脂補強ゴムの開発を進めながら、そこに粘弾性論が展開され、一方で指導社員特有の科学の知識に対する自嘲気味のコメントが、知的欲求を刺激した。
 
おそらくこの時のご指導が無ければ、リアクティブブレンドで高純度SiCの前駆体を合成しようというチャレンジもしなかった可能性が高い。科学の知識から否定されるようなチャレンジは、科学の知識が重視された当時の研究所で、とてもできる雰囲気ではなかった。
 
新事業について、起業1年後の生存率が40%。5年後は15%。10年後は6%。20年後になるとわずか0.3%に過ぎないと言われているが、起業する前に科学の知識による洗礼が研究所には存在した。
 
指導社員が、科学の知識は、それが大系としてまとまると、新しい発見を排除するようになる、と語っていたが、高純度SiCの事業は、そのスタート時に研究所で排除されたにもかかわらず、30年以上続いている希有な事業である。
   

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