2016.06/30 配合設計(たとえば難燃性樹脂)(10)
1983年に米国で開発されたコーンカロリメータ(8)は、実火災に近い現象を再現できるように、評価装置へ固定された試験片の表面に疑似火災環境を作り出し、燃焼の挙動をモニターして材料の難燃性を評価しようという狙いである。そのため、この装置を用いると燃焼現象に関する多くの情報を収集することができる。
測定原理は、有機材料の燃焼時における発熱量が酸素消費量1kgあたり13.1MJであるという1917年に発見されたThorton(米国人)の原理を用いている。この原理は実践知であり、厳密な意味で科学的とはいえないが、建築基準法の不燃材料等の評価にこの方法による発熱性試験の項目が含まれている。
コーンカロリメータほど多くの情報が得られない規格でも、燃焼速度や一定の大きさのサンプルの燃焼時間が難燃性の評価基準として採用されているケースは多い。しかし、材料の燃焼速度や火が消えるまでの燃焼時間は、実火災における材料の燃焼において一部の評価尺度にすぎないことはLOIと同様である。
燃焼時の材料挙動に関し多数の情報が得られる評価装置だけでなく、煙量だけを簡便に計測できるようにした装置もある。例えば、難燃性ポリウレタンホスファゼンコポリマー発泡体と一般のリン酸エステル系難燃剤を添加したポリウレタン発泡体について燃焼時に発生する煙量を濾紙に付着した煤で比較する装置である。
この比較で、ホスファゼン系難燃システムでは大幅に発煙が抑えられていることがわかった。このような燃焼過程の一部分だけを取り出した評価技術は、高分子の難燃化機構を絞りこんで考察する時に便利である。
ちなみに、ホスファゼン系難燃剤で煤の発生が少なくなるのは、燃焼時に揮発しないためである。リン酸エステル系難燃剤では、燃焼時の熱で難燃剤が分解し、沸点が240℃のオルソリン酸となり、揮発するため、煤が多くなる。ハロゲンを含めばなお一層煤は多くなる傾向がある。
カテゴリー : 高分子
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