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2016.07/05 配合設計(たとえば難燃性樹脂)(14)

このシリーズ(13)で行った考察により、燃焼時の熱でガラス(無機高分子)を生成してリンを燃焼している系内に固定化して、その触媒作用によりチャー生成を効果的に促進する難燃化システムを配合設計した。
 
ジエタノールアミンとホウ酸とを反応させて、ホウ酸エステルオリゴマーを合成し、リン酸エステル系難燃剤であるTCPPと組み合わせ軟質ポリウレタン発泡体に配合したところ、驚くべきことにTCPPを用いてもリンの含有率に対するLOI増加率はDAPPと同程度に高くなった。
 
このホウ酸エステルオリゴマーを他のリン酸エステル系難燃剤と組み合わせても同様の効果が得られるのかどうかを40種以上の配合系についてLOI法で調べた。そして実験で得られた多数のデータを多変量解析で処理した。
 
ホウ酸エステルオリゴマーだけを軟質ポリウレタン発泡体に添加しても、LOIの変化はわずかであり難燃効果が認められなかったが、驚くべきことに、ホウ素原子の標準偏回帰係数がリン原子との交互作用の影響で高くなっていた。
  
重回帰式 LOI=2.95×(P含有率)+15.17×(B含有率)+0.14×(Cl含有率)+18.3
標準偏回帰係数 P含有率:0.65  B含有率:0.40  Cl含有率:0.11
重回帰係数   0.84
  
 さらにTGAの測定データでは、600℃における残渣が多くなる傾向が観察され、その残渣を化学分析したところ、ホウ酸エステルオリゴマーとリン酸エステル系難燃剤が反応して生成したと思われるボロンホスフェートが配合量に相当する含有率で確認された。
 
 ホスファゼンを用いた難燃化システムで見出された、燃焼時にリンをその系内に固定するとリンの難燃効果を高めることができる、という経験仮説に基づき、燃焼時の熱で無機高分子を生成しリンを系内に固定化する難燃化システムを考案することができた。

カテゴリー : 高分子

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