2025.05/31 米の価格
今回備蓄米の価格について、400円/kgという価格が提示された。この価格を他の工業製品と比較してみたい。例えば、ポリ乳酸樹脂の価格は、同じイネ科のトウモロコシを原料としているので参考になるかもしれない。
このポリ乳酸樹脂の価格は、2005年頃650円/kgだった。これが今や400円/kgまで下がった。今後どこまで下がるのか不明であるが、原材料や備蓄米の価格を会計処理で固定資産としない理由である。ゆえに、米高騰状態に固定資産の扱いをした考え方は秀逸である。
まず、ポリ乳酸の400円/kgは、木材を原料とするセルロース樹脂TAC(注)より少し高い。TACは、古くからフィルム材料として使われてきたので、もうこれ以上価格は下がらないと思われる。その結果、安いポリオレフィン樹脂に液晶TV分野で置き換わりつつあるが、偏光板はTACを使用したほうが性能が良いので最後まで現在の価格で残るかもしれない。
PETボトルに使用されているポリエステル樹脂は、昔光学用機能性樹脂として高価だったが、今では150円/kg以下まで下がった。この価格低下の傾向からポリ乳酸樹脂はまだ価格が下がると予想されるが、とりあえず400円/kgと考えて米の値段の比較に使いたい。
ポリ乳酸樹脂は、トウモロコシを原料として用いそれを化学工場で処理し、400円/kgで販売されているので、原料となるトウモロコシは、おそらく200円/kg以下と推定される。
原材料価格として見積もった場合には100円/kg以下となるかもしれないが、中間をとって150円/kgがトウモロコシ生産業者が受け取る高めの価格と見積もってもおかしくないだろう。
トウモロコシと米ででんぷん価格としてそれほど変わらない、と見積もると150円/kgが米生産業者の受け取る価格と推定される。高く見積もっても倍の300円/kgが工業製品と比較して見た場合の生産者価格の予想値となる。
これが卸業者を経由して800円/kg以上になっているのが、現在の米騒動における価格である。玄米を白米へ加工する費用は、ポリ乳酸樹脂より安い。
工業製品のサプライチェーンは単純であるが、米のサプライチェーンも単純にすれば、400円/kgでも十分にコメ販売事業は成立するし、儲かる事業である。
例えば米の生産から小売販売卸まで手掛けるNPO法人を作るアイデアはどうだろうか。今の農協のシステムではなく、生産機能と卸機能の両方を持たせた会社組織による生産では、5kg2000円で十分すぎる利益を出すことが可能だ。
米農家も生活が安定する。工業製品に比較してあまりにも怪しすぎる価格が現在起きている米騒動で、それを基準にした米の価格が適正価格のように言われているが、備蓄米の価格は参考になる。
(注)TACの原材料価格を調べても公開されていない。当方は知っているが、立場上公開できない。原材料価格は、一般に公開されている価格よりも少し安い価格で取引されている傾向がある。米生産者が受け取るであろう値として推定した300円/kgは、高すぎる見積かもしれない。また、日本の米作りにおいて目標を設定するとしたら、PETと同様の150円/kg以下を目指すべきかもしれない。それを250円/kgで卸すことができれば、小売は400円/kg以下となる。生産から卸までの一貫した事業は、十分に儲かる環境になってきた。
米は食品だから特別価格という見解は、生産から販売における一部を担う業者の利益となるだけで、生産者の利益とならない可能性がある。これまで、コメ生産者が受け取る正しい金額が公開されてこなかったため、中間業者はかなり利益をあげてきたはずだ。JA農協はこの際生産業者へ支払っている価格を公開すべきかもしれない。
また、玄米から白米にする過程における廃材処理が問題となる。これを飼料のような有価物に活用できれば、白米の価格を下げることが可能となる。生産から卸まで一貫した事業運営を考えるべき時代かもしれない。
また、米生産者が消費者へインターネット経由で直接販売する事業も考えると良いかもしれない。仮に250円/kgで20kg販売すると、運送費を1200円で見積もっても6200円なのでこれを8000円で販売すれば90円/kgの利益となる。米1tで9万円、1万t規模で9億円の利益となる。1家族4人ならば年200kg以上は消費する。1tという数字は5世帯分である。5000世帯の顧客を確保すれば、9000万円の利益、500世帯ならば900万円の利益である。ここには人件費や運送費等諸経費は一切含まれていないので、農業は利益率の高い事業となったのではないか。
PPS半導体ベルトのカオス混合プラントを立ち上げたときに、PPSの合成から行おうとも考えた。400円/kg以下で十分生産可能であり、合成法も基本特許が切れており、興味があったが、周囲から反対された。当方が早期退職を宣言していたので、退職後の技術をどうするかが問題とされた。合成から成形体、有機高分子からセラミックス、ハードウェアーからソフトウェアーまですべてお手伝いいたしますのでご相談ください。今Python普及に力を入れておりますので、土日もWEBセミナーで対応しております。受講料は人数その他で変動しますのでご相談ください。
カテゴリー : 一般
pagetop
