2012.12/28 パーコレーション転移と帯電防止性能
帯電防止性能を評価する方法として表面比抵抗は一般的に使用される評価技術である。しかし、同じレベルの表面比抵抗でも帯電防止性能として大差が出る場合がある。実技試験と表面比抵抗とが対応しない点について以前説明したが、同一組成の材料で測定された表面比抵抗が同じでも帯電防止性能に差がでることに不思議に感じられるかもしれない。
これは、導電性微粒子を分散した場合でも、界面活性剤を使用した場合でも同じ原因ですが、パーコレーション転移が影響しています。すなわち導電性発現物質のクラスターの構造が違っても表面比抵抗が一致する場合があり、そのような場合に帯電防止性能として差が出ます。これは、低周波数領域のインピーダンスを評価すると差が出るので理解できます。
すなわち直流の抵抗成分が同じでも容量成分が異なると帯電のしやすさに差が生じる、ということです。この差は厳密な帯電防止性能を要求される分野では大問題となることがあります。アナログからデジタルに変わり、今は使用されなくなった印刷感材の分野で起きた品質問題がこの原因でした。すなわち現像処理されたフィルムが自動搬送されるときに途中で静電気が原因でフィルムが付着し、工程を止めてしまった問題です。すべてのフィルムで起きたわけでなく、再現をしないこともあり、原因究明が難しかったのですが、問題を起こしたフィルムのインピーダンスを評価し、現像処理でクラスターの構造が変化していることが分かりました。
市場の品質問題は商品の信頼性と直接関係するので、ユーザーへの対応を誤ると命取りになります。そのために市場の現象を把握できる評価技術開発は不可欠で、評価技術以外に材料設計技術も確立しておかなければなりません。商品開発でよくやる間違いは、既存のスペックで市場の問題を包含しているという誤解です。商品スペックと技術の評価技術が一致する場合もありますが、商品スペック以外に、材料設計技術を理論的に評価できる技術が必要です。
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カテゴリー : 高分子
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