2016.09/06 大学の研究費
「研究者の6割が大学など所属先から支給される個人研究費が年間50万円に満たないことが、文部科学省による研究者約1万人対象のアンケート調査(回答率36%)で分かった。「10万円未満」と答えた研究者も14%おり、厳しい研究環境が浮かんだ。
10年前と比べて「減っている」とする回答は43%で、「おおむね同じ」(28%)や「増えている」(9%)を上回った。国公立大の方が私大より減る傾向が大きく、国立大では「おおむね5割以上減っている」との回答が24%に上った。
文科省学術研究助成課は減少の原因について「収入減などによる大学の経営環境の悪化が要因の一つだろう」と説明。特に国立大では、主な原資となる運営費交付金が過去10年で10%減少しており、その影響が大きいとみられるという。」
以上は、9月5日の毎日新聞の記事である。実は大学の研究費については、一般論で論じると昔から少なく、今が特に少ないわけではない。ただ、この10年文科省が運営費交付金を毎年減額しているのでその影響が大きい。
ところが運営費交付金が毎年減額されていることは分かっていることだから、研究者の数を減らせば良いだけである。それを実行していないので研究費圧迫が起きているのだろう。自助努力が足りない。
企業では容赦ないリストラが行われており、大学だけそれが行われない、というのは世間感覚からずれている。学会には時間の都合がつく限り参加努力をしているが、そこでの発表を見る限り、この研究者は引退した方が良い、と思われる研究がかなりある。学会にもでてこない研究者がいるとも聞いている。
一方で地味ではあるが、大学で是非今後も続けてもらいたい、という研究もあり、弊社が黒字であれば寄付もしたくなるような研究者が何割かいることも確かである。研究者への引退は言いにくいが寄付の申し出はできるので、黒字回復したら、毎年一定額このような研究者に寄付したいと考えている。
本当は儲かっている企業が弊社のような感覚で寄付を目指せば、アカデミアの研究者ももう少し淘汰が進むだろうと思われる。実は40年以上前の研究所ブームの時代は、企業からアカデミアへの寄付が多かった。そして研究費の多い講座は学生の人気が高かった。
また、これは旧無機材質研究所へ留学したときに所長から伺った話だが、故石橋正二郎氏は大阪工業試験場へ年間研究費に匹敵するほどの額を寄付されたという。この話を所長が記憶されており、当時セラミックスフィーバーで留学が難しかった研究所へ無関係の業界人でセラミックスの知識の無い当方だったが受け入れてくださった。
その結果所長や周囲の研究者のご指導もあり高純度SiCの研究を花開かせることができた。石橋正二郎氏という経営者のアカデミアへの寄付という社会貢献は時代を超えて生きていた。この例のように企業のアカデミアへの寄付は余裕があればどんどんすべきだろう。恩を受けた研究者がその恩を未来ある優秀な若人達に機会を与えるという別の形で社会貢献として還元する、このような健全なサイクルが回る社会が理想である。
カテゴリー : 一般
pagetop