2016.09/14 研究テーマ(2)
SiCの反応機構について、1982年ごろの状況はすでに解明されている、という意見と不明点がある、という見解にわかれていた。これに近い問題として焼結反応についても同様に二つの見解があった。
原因は、セラミックスの研究が結果として生じた現象を中心にした科学として発展してきたところにあり、有機合成科学で大きな成果をあげた遷移状態の考察にエネルギーが割かれていなかった。
もちろん、セラミックスでも遷移状態を扱った研究もあったが、それが少なかった時代である。当時学会誌上を賑わした焼結理論の議論を見ていてもその状況を理解できた。過去の焼結理論を擁護する優秀な研究者の見解に遷移状態の考察を単なる速度論の問題と切り捨てる考え方すらあった。
少なくとも当時は、過去に発表された論文だけを引用してすべてを説明できるような状況ではなく、むしろそのような状況を素直にカオス状態と認識し、新たなテーマを見出す、あるいは最低限でも問題意識を持たなければならない。のんきに過去の論文の解説をしていては終わっているのだ。
ここで原子の拡散に着目して大きなテーマ設定をできる人は、ノーベル賞を受賞できるぐらいの能力を有しており、そして並みの能力の研究者は、問題意識を持ち問題設定してその問題を解く。それ以下は何もしない人だ。すなわち、終わっている研究者だ。
当方は並みの能力だったので、それまで公開されていたSiCの反応機構に疑問を持ち、反応速度論による解析を企画し、問題設定し、それを解いて学位論文にしたのだ。
解いてみて、新たな疑問が生まれた。そして本来設定すべき研究テーマも見えてきたが、当方が目指していたのは技術者であり研究者ではなかったので、趣味として進めることとして、それ以上の研究を企業で行っていない。ゴム会社ではただひたすら事業化を目指した。
小生の出したデータを基に論文を書かれた某大学の先生は、ひどいことにそれっきりである。せっかくそのあとに面白い研究フィールドが開けているのに新たなテーマ設定をすることなく粛々と小生のデータで論文を書いておられた。このような研究者は終わっているのである。
カテゴリー : 一般
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