2016.09/17 企画を成功させる(2)
50周年記念論文審査では散々の結果だったが、海外留学のチャンスが生まれた。アメリカの大学でセラミックスを勉強することになったのだが、当時セラミックス研究のトップを走っていたのは日本だった。
さらに、当方は半導体としての将来性とエンジニアリング材料としての将来性の両面を兼ね添えたSiCに興味があった。社内の留学経験者は、海外で3年間遊べるチャンスだからただ留学するだけでも良い、とアドバイスしてくださったが、ここは誠実真摯に捉え、SiCで世界のトップを走っていた無機材質研究所へ留学したい、と人事部長に相談した。
人事部長は海外留学の予算が取ってあるから、日本なら長期留学が可能だ、といってくださり、すべて自分で段取りを決める条件で許可が出た。すなわち海外留学ならば留学のお膳立てを会社でやるが、国内ならば、留学先との調整から住居まで全部自分で行えと言うことだった。
まず学生時代にお世話になった先生にお願いし、無機材質研究所の研究者の紹介をしていただき、無機材質研究所を訪問した。そこで、セラミックスフィーバーのため空席が無いことを伝えられた。また、専門外の人間では研究に邪魔なのでセラミックスメーカーの研究者が優先される、と言われた。これは、大変ショックだった。
とりあえず、SiCの研究部門の責任者の紹介だけでも、とお願いし、何とか面会できたが、聖人と呼びたくなるような考え方の先生だった。しかし、それでも専門外の研究者では留学は難しい、と言われた。ただ、そのI先生の講演が1ケ月後にあるから一度勉強してみてください、とアドバイスしてくださった。
その1ケ月後に行われたI先生の講演後に1時間お話できる時間を作っていただけた。その場で、前駆体法による高純度SiCの合成技術について説明(注)したところ、大変すばらしい、と称賛されゴム会社の役員の方と無機材質研究所へ訪問し、所長に面会するようにアドバイスされた。佳作にも入らなかった50周年記念論文の内容が天才的な構想だと評価をうけたのでうれしかった。
(注)50周年記念論文に応募した内容を社外の研究者にお話しする許可を上司から得ていた。審査に通らないような内容だったので簡単に許可が下りた。「社外研究発表許可書」というのがあり、それを提出している。
カテゴリー : 一般
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