2016.09/29 問題となった、ある規格
昨日10月4日の講演会の紹介のためにかつて社会問題になった建築の難燃規格について触れた。これは、規格に定められた試験試料に着火する方法が問題で、試料をセットし、試験が開始され炎がこの試料に当たると燃焼し始める。
すべての試料が手順通りに着火してくれればよいが、試験試料の中には余熱や試験炎が着火した瞬間の熱で、もちのように膨れ始める材料があった。最初この発見をした人は、高卒の技能員の方で、これは面白い発見ということになった。
ところが、試験試料がもちのように膨れ、試験炎から逃げるために試料へ着火することができないので、本来ならば試験は失敗のはずだ。ところがこの規格では試験試料の変形について炎から逃れるほどの大変形あるいは着火しない場合についてどのような判定にするのか決めていない。これは評価法がおかしいのだが、お国の偉い先生方が考えられた成果ということで疑われることはなかった。
その結果、もちのようにうまく確実に膨れる材料の研究開発が行われ、材料設計手法について特許出願がなされた。他メーカーもリバースエンジニアリングと特許情報から同じような材料設計の商品を特許回避して製造するようになった。
このような場合に、現在の企業ならば、評価法の問題を疑い、本来規格が目指しているあるべき姿を想定し、改良された新評価法を開発する。そしてその評価法を権利化するとともに、その評価法で必要となる材料群の特許を押さえ、評価法は無償で開放しその評価法を標準規格にする戦略をとるのが正しい。
しかし、当時はそのような発想が無かったので、狭い範囲の特許出願しか行われず、他社が類似技術で追従することが容易となり、難燃性に問題を抱えた商品が主流になる事態になった。
責任は問題のある規格を制定した国にあるわけだが、実際には問題とわかっていてもそれを是正せず普及させた企業も同罪である。社会に出て経験が浅い当方は問題の是正を上司に提案しているが、逆に誤った指導をされた。ただその指導方法にも少し問題がったので、反骨精神で難燃化技術について評価技術も含め、あるべき姿を追求するようになった。