活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2016.10/25 ホウ酸エステル(1)

始末書を書くことになったホスファゼン変性軟質ポリウレタンの開発により、炭化促進型難燃化システム(インツメッセント系の難燃化システム)の設計法を見出した。その設計法が汎用的な考え方かどうか確認するために、ホウ酸エステルとリン酸エステルとの併用系の難燃化システムを研究開発した。
 
そもそもリン系の難燃剤では、燃焼時の熱と酸素でオルソリン酸が生成し、240℃以上で揮発する。リン酸のユニットが脱水と炭化反応の触媒作用を発揮しているのだが、燃焼時には炭化反応に寄与するやいなや揮発している。
 
リン酸エステル系難燃剤を添加し、難燃化した軟質ポリウレタンフォームの燃焼試験を行うとそのことを確認できる。すなわち、燃焼時のガスの中にはリン酸成分が観察されるし、燃焼後の炭化物について分析するとほとんどリンのユニットが残っていない。
 
ところがホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームの燃焼試験をして驚いた。まず煤の発生がほとんどなく(注)、ガス分析を行ってもリン成分が燃焼ガスに観察されない(注)。燃焼後の炭化物を分析するとホスファゼン分解物が添加量に相当する量で残っていた。
 
そこで燃焼時にリンを含む単位を揮発しないように固定化するアイデアを考案した。すなわちホウ酸エステルと反応させてボロンホスフェートの形態にすることを提案した。始末書に書かれたこのコンセプトは主任研究員に大うけした。始末書としては0点だったかもしれないが、とりあえずこのアイデアでご機嫌を取ることができた。
 
(注1)煤は不完全燃焼で発生する。しかし、煤として飛散するまえにチャー(燃焼面にできる炭化物のことをこのように呼ぶ)に変化させる機能がホスファゼンには(リンのユニットには)触媒作用として存在する。ホスファゼンでは、その耐熱性のある骨格で触媒作用を示すリンのユニットが揮発しない。一般的なリン酸エステルでは、熱分解してオルソリン酸に変化する。エクソリットのような金属イオンが存在したリン酸エステルでは、ホスファゼン同様にリンのユニットが揮発しにくい。

 

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop