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2016.11/22 過重労働

電通の自殺事件の影響によるのか過重労働の話題が多い。それを読んでいて気になるのは、働き過ぎが良くない、という一つの視点である。過重労働で肉体的な病気になるおそれはあるが、サービス残業やヤミ残業などいわゆる過重労働とみなされるたぐいについてやり尽くした当方から見れば、職場環境や組織が知識労働者に与える影響こそが問題として大きいと思っている。
 
もっとも毎日定時退社でき、一日8時間の労働で十分な成果があがるような仕事が理想だが、今時そのような仕事は少ないと思う。研究開発職であれば勉強時間を労働に含めるのかどうかと言う問題が発生する。もし、研究開発職の勉強時間を労働時間に組み入れたときに、一日8時間の労働で済んでいるとしたら、よほど優秀な社員の多い会社だろうと思う。
 
多くの日本のメーカーでは、原材料価格の3倍が商品の値段になっているが、原材料価格の10倍の商品を販売している企業ならば、一日8時間の労働のところもあるだろう。このあたりの考え方については説明を省略するが、付加価値の極めて高い商品を販売できるならば、労働時間が短くなる可能性がある。
 
適切な労働時間が良いことは当たり前である。また、短時間の労働で価値を生み出せることが理想である。そのためには、社員のスキル向上が求められ、多くの会社では、このスキル向上のための時間も人材育成として労働時間に入れている。
 
労働が生み出す価値とそのために必要なスキルなどを考えていった場合に、単純に労働時間の長さだけで善悪を論じることが難しくなる。自己実現のために長時間を費やしているならば、マイナスの精神的負担ではなく、スポーツマンの練習で味わう楽しい苦痛だろう。
 
ところで、電通は付加価値の高い商品を販売しているように見えるが、実際の労働時間を商品の中に組み込んだら、おそらく付加価値など無くなり、原価ぎりぎりで事業を運営している実体が見えてくるのではないか。会社の生み出した価値と社員の労働時間との関係を正しく把握することは経営者の責任である。
 
工場の原価管理については数値化しやすく、その結果大企業の工場の現場で過重労働の噂をあまり聞かないが、スタッフ職の労働時間管理は難しい。それゆえ、研究開発費を売り上げの何%と決めて、その中に労務費なども組み込み管理しているのが実体ではないか。その結果労務費の上限が押さえられサービス残業などの過重労働となってゆく。極めて単純な理屈である。
 
勉強時間まで労働時間に含めると、日本全国の大企業の研究開発職の大半は過重労働となるはずで、過重労働=自殺の原因と単純に捉えると問題解決を誤る。
 
過重労働についていろいろ思いを巡らすと、そもそも働くということについて様々な考え方があるのではないか、という疑問にぶちあたる。働く意味は、貢献と自己実現と定義したのは、故ドラッカーであり、この定義に沿って働いた場合の過重労働の問題は、働く時に自殺まで知識労働者に考えさせるマネジメントとは、となる。
 
労働生産性を上げ、労働時間を短縮し、皆が明るくにこにこと働けるような職場は理想である。しかし、企業の現実は経済性を追求=人件費削減しなければいけない。能力のある人は知恵を出して労働時間を短縮できるが、知恵の無い人は汗で成果を出さざるを得ない現実がある。気持ちの良い汗を流せるようなマネジメントであれば、理想とすべきではない過重労働であってもそれは働く楽しい思い出となる場合もある。
 
 
 
 

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