2017.02/01 高分子材料(21)
高分子材料の力学物性を改良するには、高分子の高次構造に関する知識が重要になってくる。しかし、当方が大学で学んだ高分子の知識は重合反応が中心で、すなわち一次構造の知識が重視され、高次構造については相分離した海島構造を学んだ程度だった。
一次構造から知識を階層化させて高分子を体系として学ぶために一次構造の知識は大切である。ただし、それは一次構造で高次構造をすべて制御できる、という前提が必要だ。ところが高分子加工では、非平衡状態で成形体を製造する場合が大半であり、一次構造で高次構造を制御し材料設計するといった手順で多くの場合に開発できない。
実務では手元にある高分子の高次構造を解析し、この高次構造と高分子成形体の物性との相関を考察し因子を探る、という作業が中心で、この高次構造を変化させる可能性のある因子の一つとして一次構造を考える、という手順である。
1970年代にはすでに用途が決まると高分子のおおよその種類が決まる、すなわち一次構造と用途の概略の関係が分かってきており、高分子材料メーカー(高分子合成メーカー)と高分子加工メーカーとが別々に事業を展開していた。就職したゴム会社では、合成部門が1970年ごろに社内に存在し合成ゴムの開発をやっていたようだが、1970年末にはその合成部門が独立して別会社になっていた。
余談だが、このゴム会社の研究所にはDNAとして基礎科学から事業を起業するという思想が就職したときにも残っており、研究所の業務の進め方は大学同様のスタイルだった。また、高純度SiCの新合成法を当方が開発したときには、このDNAのおかげですぐに2億4千万円の先行投資が決まり、当方の高純度SiCの事業を将来子会社として独立させるシナリオが大歓迎された。
もしこのシナリオどおり進んでいたなら今頃当方は子会社の社長としてパワートランジスタの開発をやっていたかもしれない。当時の鉛筆書きのプレ資料を時々眺めては若い時を思い出し気持ちを奮い立たせている。
カテゴリー : 高分子
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