2013.01/24 弊社の問題解決法について<7>
この第一の山場までの刑事コロンボの「考える技術」は、刑事という役職の制限からくる通常の証拠集めと証拠に基づく演繹的推論を前向きに展開しているだけですが、真犯人に結び付く証拠が揃わないだけでなく、肝心のアリバイ崩しもできません。すなわち、証拠やアリバイを基にした前向きの推論では犯人を特定できないのです。
そこで犯人が証拠隠滅までやった、と逆から推論し、空港の荷物検査における往路の荷物が帰路の荷物よりも2kg多い点を精神科医フレミングに問い詰めます。犯人は嘘の説明を行うので、嘘とわかっていても逮捕のための決定打になりません。
しかし、ここで精神科医フレミングが刑事コロンボの追跡をかわすために友人の検事に頼んで捜査に対して圧力をかけたのです。刑事コロンボは、精神科医フレミングに自分が捜査を外され彼に敗北したことを告げます。勝ち誇った精神科医フレミングは、夫婦の間のもめごとの解決手段が殺人しかなかったことをほのめかし、刑事コロンボの精神分析結果を語り始めます。視聴者は第一回のこのシーンで刑事コロンボのキャラクターを知ることになるのですが、刑事コロンボの反撃を期待させる場面でもあります。
その夜、刑事コロンボは、女優ハドソンに会いにゆきます。そして、殺人事件の全容を説明し、彼女に自首を勧めました。しかし彼女は承知しませんが、精神的な弱さから不安になり、精神分析医フレミングにすぐ来て欲しいと頼みます。しかし、精神分析医フレミングは冷たく拒否します。刑事という制約から攻め口には制限がありますが、犯人という結論に直接つながる共犯者を責めるアクションがあったのか、と視聴者を納得させるシーンです。ところが、刑事コロンボのすごいところは次の結末です。
刑事コロンボは女優ハドソンを責めることで、精神分析医フレミングが必ず動くことを読んでいたのです。すなわち、愛人ハドソンの精神状態を心配になった精神分析医フレミングは、翌朝彼女のマンションを訪問しますが、プールで自殺した彼女そっくりの女性が救急車で運ばれるシーンを見ることになります。驚く彼に刑事コロンボが質問を浴びせかけます。その質問は捜査に関するものではなく、人間の愛情に関する質問です。視聴者の予想を超えたアクションが取られたことで、このシーンが第二の山場として盛り上がります。そこでフレミングはハドソンを愛していなかったことを話してしまいます。その一部始終を隠れて聞いていたハドソンが現れ自分が共犯者として自首することを告げ、物語は終わります。
このように、刑事コロンボでは犯人逮捕(結論)に至る彼のアクションを推理する、あるいは彼と犯人(結論)とのやり取りがドラマの面白さになっています。一般の探偵小説では、犯人(結論)を捜す、すなわち結論へ向かう前向きの推論を展開するのに対し、この物語では、彼自身も勘で犯人を見出しているので、視聴者とともに結論から事件の原因へ遡るような逆向きの推論を展開することになります。
(明日へ続く)
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