2025.08/24 素材と生成物の関係
コロナ禍前に終了したある国研のホームページに、素材と生成物とが1:1対応関係の材料技術開発を目指す、というよくわからないプロジェクトがあった。
こんなプロジェクトを誰が企画したかどうか知らないが、そのようなプロジェクトでも税金が10億円ほど年間使われるのである。理事長にやんわりと皮肉を言ったら、理事長はよく中身を理解していない。
このあたり、あまり書くと嫌われるので本題に入るが、機能材料と言うものは、素材の配合設計とプロセス設計が1セットである。同一配合でもプロセスが変化すれば、生成物も変わる。
ゆえにプロセス抜きで配合だけで1:1に対応する技術の研究開発は、意味が不明である。有機合成ならば、プロセスが決まれば、生成物は、仕込みの原料で構造は一義的に決まる。
しかし、高分子のコンパウンディングや無機材料では、配合と生成物との1:1対応をプロセス抜きで語ることはできない。無機材料で結晶材料を目指す場合には、高分子のコンパウンディングよりも1:1対応を取りやすい。
しかし、高分子のコンパウンディングでは、混練機のスクリューセグメントによりコンパウンドの高次構造が変わり、結果として配合が分かっても混練技術が無ければ、同一コンパウンドを製造できない、ということが起こりうる。
当方は20年ほど前に、国内樹脂トップレベルのメーカーと6年間研究されて開発されたコンパウンドの配合をそのまま変更せず、混練プロセス設計だけを変えて、半年で、似て非なるコンパウンドの開発に成功し、製品を立ち上げている。
トップレベルと言われたコンパウンドは海島構造だったが、当方の開発したコンパウンドは、χが正の値であっても相溶したマトリックスのコンパウンドであり、その成形体は全く異なる物性を示した。
カテゴリー : 一般
pagetop
