2025.09/07 粘弾性
高分子材料は、バネのような弾性という性質と、粘っこい粘性という性質を持っている複雑な物性を示す。身近にある各種ケースやスイッチレバーに用いられている樹脂は、弾性が強く現れ、ゴム紐は弾性と粘性が混ざっていることを感じさせる。
ゆえに高分子材料の粘弾性について、弾性の性質をバネで表現し、粘性の性質をダッシュポットで表現して研究する学問が古くから発展してきた。
すなわち、高分子材料の力学物性は、ダッシュポットとバネで表現できる、という仮説を形式知にする努力が50年近く前まで、高分子科学の一分野として存在していた。
これが1980年代になると風向きが変わり、分子論的な研究すなわち、高分子1本の力学的性質から積み上げてバルクが示す力学物性を表現しようという研究へパラダイムが変わった。
当時講談社から発売された「高分子緩和現象」という本は、少し癖の強い本であったが、学術書としては異例のベストセラーとなっている。この本には、明確にダッシュポットとバネのモデルを忘れましょうと宣言されていた。
当方がゴム会社に入社した時には、このパラダイムの変換が始まった頃であり、粘弾性論の研究者は研究所で肩身の狭い思いをされていた。
そのような状況を見てきたのと、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの工場試作を成功させた後、始末書を書かされたこともあり、ゴム会社の研究所における科学偏重の姿勢を批判的に見るようになって、オブジェクト指向で研究開発を進めるようになった。
カテゴリー : 一般
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