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2025.10/24 昔の技術調査こぼれ話

学生時代に研究情報の調査のためChemical Abstractを毎週一定時間読む必要があった。その作業から、就職後解放された。


しかし、新しい研究テーマを企画するためには研究情報調査が欠かせない。企業では研究管理部門が情報調査を担当していて、調査が必要であれば、そこへ依頼するのだが、外部調査会社へ丸投げで、期待した情報など得られなかった。


高純度SiCの事業企画をしたときには、ひどかった。ポリウレタンの難燃化研究を担当していて、研究テーマとして認められていなかったので、年休を取り自分で大学へゆき情報収集しなければいけなかった。交通費もコピー代も自前である。


先行投資2億4千万円が決まり、ファインセラミックス棟が建設されようとしていた時に研究管理部門が、アメリカのバッテル研究所へ依頼していた調査レポートを持ってきた。


英文で書かれているので、届いた資料をそのまま持ってくるような仕事のやり方である。調査費用に1000万円かかっているので、レポートにまとめてほしい、と担当者が言ってきた。


管理部門の担当者の仕事のやり方は、他人へ丸投げして自分の成果としている。少々腹がたったが、怒ってみても仕方がないので、調査資料を読んでみた。読んでみて、それ以上に腹が立った。


中身が薄いのである。1000万円かけた資料のまとめと、当方が調査した情報の要点をつけて、要約文に1000万円のレポートは中身が無い、と明確に書いておいたら、担当者が、要約文を書き直してほしい、と言ってきた。


小生は正直に書いたものなので、と言ったら、担当者は当方の調査して集めた資料を見せてほしい、と言ってきた。それで、当方の資料は、テーマとして認められていなかった時に年休を取得し自分の金で集めた資料であり、1000万円の資料とは扱いが異なる、と説明している。


当時は、技術情報調査の仕事を企業の研究所でもよく分かっていなかった。個人の力量に依存していた時代である。


ちなみに1000万円のバッテル研究所のレポートはどのような内容だったのか、少し説明すると、市場調査は細かくなされ、レポートの半分を占めていた。しかし、イノベーションが起きている市場なので意味のない内容だった。


市場予測も載っていたが、具体的なテーマにつながる内容は何もなかった。電子情報分野が成長する、と書いてあっても、当たり前のことで、重要なのは具体的な技術や材料である。


ペロブスカイトの成長が著しい、とあったが、超伝導体を伺わせるヒント情報は、無かった。しかし、一部の研究者は既に研究を始めていたので、その情報を載せるべきだと感じた。小生は、ペロブスカイトの導電性に関する論文を3本ほど持っていた。1000万円のレポートには、その研究についてまったく触れられていなかった。


細かく問題点を書いても仕方がないが、1000万円かけても、先端の研究テーマ情報を得ることができなかった時代である。先端の情報を集めるためには専門家の臭覚が必要な時代だった。


そもそもセラミックスフィーバーが日本で始まり、日本が最先端を走っていた研究分野について、アメリカの調査機関に依頼しているところがずれているような印象を当時持っていた。


1000万円かけてもごみのような調査しかできない時代から、素人でもプロンプトさえ書ければ、無料のAIで最先端の情報が得られる時代になった。

カテゴリー : 一般

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