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2017.05/04 科学の問題(8)

界面活性剤の機能についてはHLB値が定義されている。そしてそれを用いて議論を進めるプロセスが教科書に書かれている。しかし、実用化されている界面活性剤は、教科書に書かれているような美しい単一構造の化合物ばかりではない。

 

構造が異なる多数の化合物が混合された状態のものもあれば、構造不詳のものも存在する。さらにひどいカタログでは界面活性剤のHLBを推定で記述しているケースもある。カタログに書かれたHLB値について営業担当は推定とは言わず、相当品という言葉を使っていたが、その値を実際に測定していない、と回答された経験もある。

 

研究所の報告書では、HLB値について自分たちで測定し使用していた。そして混合物については科学的に扱いにくいという理由で検討対象から外していた。これは、技術開発を科学的プロセスで進めるときに犯しやすい過ちである。

 

すなわち科学的な厳密性を追求するあまり、問題解決の手段を科学的に論理展開できる対象だけに絞り、その他を排除するプロセスをとってしまう。その他の現象の中には科学的に意味の無い現象であっても技術の視点で重要な現象も存在する。

 

例えばiPS細胞の研究では、24個全ての遺伝子を検体に放り込んで細胞の初期化を観察する実験を行っている。多数の遺伝子を同時に放り込んでも細胞内に取り込まれるかどうか不明であり、科学の厳密な視点で言えば、意味の無い実験である。

 

むしろ実験がうまく行かないので手持ちの遺伝子を破れかぶれになり全部放り込んだ、と誤解されるので普通は行わない。しかし、その実験で細胞の初期化が起きたのだ。科学的に意味の無い実験であったが、iPS細胞の技術開発では価値のある機能を現象として起こしたのだ(技術開発ではこのような実験は大切である)。

 

山中先生の本当に偉いところは、科学者でありながら学生の破れかぶれの実験結果を丁寧に評価し採用している点だ。科学こそ命、あるいは科学オタクと言ってもよいような上司の場合には、「たまたまうまくいっただけで、科学的に意味がない」と実験結果を軽く扱う場合もある。

 

トリュフというキノコは見つかるまでに7人の人間の股の下に置かれる、とか言う言葉を外人の科学者の講演で聞いたことがある。日本人ならば松茸を引き合いに出すかもしれない。あるいは股下という言葉から日本人でも忖度して松茸をトリュフとするかもしれないが、新発見が見つかるまでにその現象は幾人かの科学者の目に触れるが見落とされる、と言う意味だそうだ。

 

ところがこのiPS細胞については、未だに初期化確率を上げる研究が行われている。ノーベル賞級の研究なので特にコメントしないが、当方のあらゆる界面活性剤を集めて行った電気粘性流体の増粘問題を解決する実験や高純度SiCの前駆体を合成する方法、カオス混合技術など試行錯誤の成果でありながら極めて再現性の高い機能を一発で仕留めている。

 

科学的なKKDの成果と言ってもよいが、いずれの成果もまっとうな思想に基づく技術開発プロセスで行っている。最近その方法についてセミナーで公開しはじめた。

 

 

カテゴリー : 一般

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