2017.06/13 事例(1)
カラー電子写真に中間転写ベルトと呼ばれる10の9乗から10の11乗Ωcmまでの間の定まった均一な抵抗値をもった部品がある。紙に情報を転写する前にYMCK4色の画像を一度転写ベルト上に書き込む。この抵抗値がばらつくとこの情報が正確に紙に転写されなくなる重要な部品である。
主に溶媒に溶かしたPI樹脂にカーボンを分散し、キャスト製膜してベルトに仕上げる。これを押出成形で製造しようとするとカーボンの分散状態が悪くなる場合がありそれがベルトの抵抗値のばらつきとなって現れる。
押出成形に用いるコンパウンドの段階でどこまでカーボンの分散が安定化されているかが重要となる。すなわちコンパウンド段階でカーボンの分散が不安定であると成形金型内でカーボンの分散が進み、その結果金型の位置で分散状態が変わり抵抗のばらつきとなる。
PPS/ナイロン/カーボンの処方で外部からコンパウンドを購入し押出成形によるベルト開発が行われていた。コンパウンドメーカーは押出技術が未熟なので成形がうまくゆかない、という考え方であった。押出成形という技術をよく知らないコンパウンドメーカーを選ぶとこのような困った問題になる。
コンパウンドの段階でカーボンの分散状態を安定化してほしい、とお願いしても安定化という抽象的内容のため聞き入れてもらえない。結局子会社の敷地の隅にコンパウンド工場を建てて自分でコンパウンドの開発を行ったのだが、この時科学的プロセスを採用しなかった。いきなり抵抗の安定したベルトを100%近い収率で得られるコンパウンドを製造した技術プロセスで進めた。
カテゴリー : 一般
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