2017.05/22 仮説で排除されたアイデア(1)
科学のプロセスで技術開発を行うときに、仮説立案は注意しなければいけない過程である。電気粘性流体の例で示したように、仮説に基づく実験(仮説に基づいてHLB値が明確に定まる界面活性剤が用いられて実験が行われた)の結果から否定証明を始めている。そして仮説で排除された界面活性剤(実験で検討されたHLB値の範囲に含まれた界面活性剤でも曇点や分子量が異なれば界面活性効果は異なる場合があるが、どのように異なるのか科学的に解明されていない)から解決策が見つかっている。
「実験は仮説を確認するために行い、試行錯誤の実験などもう終わりにせよ」とは20世紀に研究所でよく叫ばれたかけ声である。そして仮説立案の苦手な研究員は研究職に向かない、という人事評価をされた例も見てきた。
科学の研究において仮説立案の能力は重要である。しかし、技術開発において仮説はそれほど重要ではないと、退職してから思うようになってきた。それは中国で技術指導してみて感じたことだ。
どのような実験をしたら良いのかコツを伝授するだけでうまく応用展開して行く。このような光景を見ていると仮説など無くても技術開発ができるのでは、と思って日本でも同様に試してみたら、科学などほど遠い仕事をしてきた若者が新しい技術を見つけてくれた。
コーチングのなせる技と言ってしまえば自画自賛になる。そもそも技術開発は人間の自然な営みで楽しい行為であることに気がつくべきで、楽しければ人間は無駄と思われる余分な作業でも喜んでする。新たな発見は案外そんなところから生まれがちである。
これは仮説を立案したために排除された現象に潜むアイデアをどうしたらよいか、という問題提起となる。答えは「対偶関係は真」というコツだが、これは機会があるときに説明する。アイデア創出法として当方のセミナーで扱っている。
カテゴリー : 一般
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