2017.06/25 混練プロセス
高分子材料は合成された高分子をそのまま活用するケースは稀である。多くの場合に他の材料を配合して用いる。例えば、樹脂やゴムの成形体は、混練プロセスで配合物を均一に混合してコンパウンドと呼ばれる形態にしたものを成形加工して製造する。
混練プロセスは、コンパウンドに要求される性能に応じて設計されるべきだが、これまで出会った樹脂技術者はゴム技術者よりもその感覚が乏しい。樹脂技術者の中にも混練機に様々な工夫をして高性能なコンパウンドを製造できるよう努力している人もいるが、ゴムの混練プロセスにおけるそれには及んでいない。
樹脂の混練プロセスでは二軸混練機が一般に用いられるが、タイヤなどに使用されている高性能なゴムの混練プロセスは、バッチ式のバンバリーとロールの組み合わせプロセスである。ゴム会社の工場見学に行くと、バンバリーで混錬後ロール混練を行っている工程を見せられる。ところが実際のゴムの混練はそのような単純なプロセスではない。
ゴム種によってはこのような単純なプロセスで混錬されるコンパウンドも存在するが、ロール混練を行ってからバンバリーにそれを投入し、その後またロール混練する場合や、ロール混練を繰り返し用いる場合も存在する。すなわちコンパウンドの要求される性能に応じてプロセスも変更されているのだ。
ゴム材料の値段とその重量から乗用車用タイヤは一本2000円前後で販売されてもよいはずだが、プロセスコストがそれなりにかかるので単純に原材料価格からその値段を推定することは難しい。
これが樹脂のコンパウンドでは、自動化された二軸混練機からストランドが押し出され、ペレタイザーでペレットにされて出来上がる。原材料からコンパウンドに至る時間はせいぜい10分以下である。1台の二軸混練機で一時間あたり1t以上生産されているコンパウンドも存在する。
このようにゴムと樹脂のコンパウンドの生産プロセスは大きく異なるので、それぞれの技術者のコンパウンドに関する考え方も大差がある。ゴム技術者はコンパウンドに性能を創りこむ感覚で混練プロセスを眺めているが、樹脂技術者は、どのように生産効率をあげるのかを考え、性能は二の次である。
実際に射出成型用コンパウンドに問題があり、某会社の混練プロセスを監査に言ったところ、二軸混練機のシリンダー温度を計測する温度計が2本壊れていても平気で生産していた。現場でそれを指摘したところ、異常が無いから大丈夫だという。当方はコンパウンドを分析し、射出成形体で品質問題が起きた原因をコンパウンドの品質ばらつきにあるとにらんで監査に来ていると伝えても、問題にしない。
ペレタイザーから出てきたコンパウンドを手で取り眺めたところ、スが入っていた。ところがそれを見せても問題ない、という。結局このコンパウンドメーカーとの取引をやめるようにレポートを書いたが、もし射出成型メーカーの方でコンパウンドに疑問が生じたら弊社にご相談ください。大手のコンパウンドメーカーでもその現場管理が十分にできていない事例をいくつか見てきたので対策の仕方を御指導いたします。
カテゴリー : 高分子
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