2017.07/06 配合設計
ゴムや樹脂、あるいはセラミックスなどの材料は、一種類の素材だけで使用されることは稀である。大抵は複数の素材を配合して使用される。セラミックスフィーバーでセラミックスの配合設計に関する考え方は大きく進歩した。高分子材料については2000年前後の高分子精密制御プロジェクトやOCTA開発の土井プロジェクトの成果で階層構造で設計する考え方が普及した。
このような科学のイノベーションが行われる以前には、各社各様の方法が行われてきた。面白いのはゴム会社で統一した考え方はなく技術者により独自の配合設計法が語り継がれていた。しかし、転職した写真会社では配合設計という考え方は特になく、転職後しばらくしてから設計表という概念が標準として用いられるようになった。その後タグチメソッドが登場し、基本機能を中心とした設計法に代わっていった。
今でも記憶に残っているのは樹脂補強ゴムを開発していた時に指導社員から教えられた考え方だ。高分子材料はプロセスの履歴が必ず物性に現れる。特にゴム材料は顕著で、配合設計ではプロセス設計をまず行え、と言われた。加硫ゴムでは、バンバリーとロール混練がプロセスの基本となるが、この組み合わせが配合設計にも影響を与えるという。
ところが、技術者の中には、配合を決めてからプロセス設計を行う主義の方もおられた。そのような方は、ニーダーだけで加硫ゴム配合を練り上げて実験していた。新入社員の当方にはこのやり方が合理的に見えた。
指導社員曰く、ニーダーだけで練り上げたゴム配合で最良の配合が見つかったとしても、バンバリーとロール混練のプロセスでその配合を実用化できない場合もあったという。すなわち合理的に見えた方法では実用化できないリスクがあるので、最初にプロセス設計を行うのだそうだ。
ゴム会社ではゴムを練り上げるのに複数のプロセスが行われていた。それら複数のプロセスでどのようなゴムを混練するのかは経験知が存在した。すなわち指導社員の言われたプロセス設計とは、開発成果の受け入れ先が行っているプロセスを基準にして考えろ、という意味だった。
プロセスが決まるとその制約から使用できない材料も出てきたりする。そもそもゴムの混練はバッチプロセスなので制約は少ないが、それでも時々プロセス適性が無い材料が出てくるそうだ。
このようなプロセス適性の無い材料を検討に入れないのは不安になるが、指導社員はまずそれらを除外して配合設計を行った方が実用化のスピードが速いと教えられた。
それではプロセスの変革は必要ないのか、という質問をしたところ、カオス混合のような材料に著しい効果の現れるプロセスが考案されたときには迷わずそれを採用する、と質問者としてどのように理解したらよいのか分からない回答が返ってきた。
その後いろいろ尋ねたところ、ゴムの混練プロセスは保守的であり突然イノベーションが起きることはないと言われた。大切なのはゴムの混練プロセスが変わると同一配合でもその物性が大きく変動するという問題がある状態で、どのように開発手順を考えたらよいのかということだそうだ。すなわち、配合設計を行うときにプロセスを変動させて行うと問題が難しくなる。
材料における配合設計とプロセス設計の問題は、高分子材料でもセラミックス材料でも難しい。プロセスを決めておいて配合設計を行う、という指導社員の考え方は一つの考え方であり、当方は目標とする材料構造を決めてからプロセス設計と配合設計を同時に進める考え方である。この考え方で高純度SiCの新合成法やカオス混合技術などを発明した
カテゴリー : 高分子
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