2017.07/12 未来の事業を育てる
1980年代に起きたセラミックスフィーバーは、セラミックスとは無関係の企業も巻き込んだイノベーションとなった。ゴム会社では故服部社長がCIを導入し、社名からタイヤをはずし、非タイヤ部門を会社成長のけん引役とする方針を出し、その3本の柱として、1.電池、2.メカトロニクス、3.ファインセラミックスを育てる、と全社員に宣言した。
そして、世界初のポリマーリチウム二次電池が開発され、日本化学会技術賞を受賞している。メカトロニクスについては電気粘性流体の開発に力が入れられた。またゴムをアクチュエーターとして利用した軟体ロボットはつくばで開催された科学万博で展示された。
しかし電池事業は学会賞受賞後中断され、電気粘性流体もいつの間にか無くなった。ただし、高分子前駆体を用いた高純度SiC粉体合成技術を基盤としたファインセラミックス事業は30年以上たった今でも続いている。
実際にこの事業を企画し中心となって推進した経験から、異業種の事業を育てるときには経営の覚悟が重要だと思っている。経営陣のバックアップさえあれば苦しくても担当者は努力するものである。事業として立ち上がるまで様々な妨害があったが、誠実真摯に対応してきた。
このような新事業を立ち上げるときの苦労は企業の風土によっても変わる。例えばかつてダボハゼと言われた旭化成は住宅事業や半導体事業に進出し成功させた。そして今自動車事業に進出するかのような動きを見せている。
外から見る限り、この会社の事業の育成能力は一つのDNAとして伝承されているかのようである。一方ゴム会社も創業者の時代の成功体験があり、それが高純度SiCの事業成功の要因になっているのだが、残念なことに担当者にそのDNAが伝承されていないようだ。今後SiCのパワー半導体は、電気自動車の普及に牽引され成長産業の一つになるのだが、これの開発を日本化学会技術賞受賞後にやめてしまったのだ。もったいないことである。
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