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2017.07/15 よくわからない話

高分子材料では教科書を読んでみてもよくわからない現象に頻繁に遭遇する。面白いのは、よくわからない現象なのにわかっているように話す人がいることだ。否定証明についてこの欄で以前紹介しているが、否定証明を得意としている人も同様である。どうして簡単にできないと否定できるのか不思議に思うことがある。

 

確かに目の前の現象を見ている限り出来そうもないことはよくある。諦めて他の手段に移ったほうがよい時には、当方でも潔く他の手段を検討する。しかし現象は出来そうもないように見えるが、他の現象との比較でできてもよさそうな時には、暇を見つけては再度チャレンジすることが時々ある。

 

昔熊本大学上出先生とこのようなお話をして意気投合したことがある。上出先生によればTACの良溶媒はアセトンであるが皆この話を信じないという。実際にTACをアセトンで溶解しようとしてもうまく溶けない。しかし圧力をかけてやると簡単に溶ける。そして一度溶解すると安定である。

 

これを実際に体験すると確かに上出先生の言われていることは正しいと納得できる。しかし、普通にただアセトンに分散し攪拌しただけでは全然溶解しない。

 

話は変わるが、同じPSでも一般のPSとSPSでは接着性が全く異なる。PSに簡単に接着したラテックス薄膜をSPSにくっつけようとしてもうまくゆかない。これを体験すると結晶化度の高い高分子は接着が難しいという経験知が身につく。

 

PPSの中間転写ベルトを担当した時に、端部にガイドテープを接着する話題が出た。PIベルトに用いていた接着剤ではうまくくっつかないという。そこでいろいろ試してきたがよいものがみつからないという。しかし、当方が開発したPPSベルトは6ナイロンが相溶したPPSなのでアモルファス相が多いはずで、接着しやすいと思われた。当方が過去に検討された接着剤を塗ってみたところ、うまく接着した。

 

そこで、当方の開発したPPSでは非晶質相が多いので接着には有利だ、と担当者に説明し再挑戦を促したところ、やはりくっつかない、という。当方が試みた接着剤と同じである。ただ異なるのは接着剤の塗布の方法だ。ここはノウハウになるので詳しく書けないが、当方がやった方法を伝授したところ、やはりうまく接着した。高分子材料ではこのような話がよくある。大抵はノウハウになっているので書きにくい。

カテゴリー : 高分子

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