2017.07/16 信じる者は救われる
二軸混練プロセスでカオス混合を初めて実用化したプラントを開発したときのメンバーは、朝昼晩とマイカーの中でパイプをふかす習慣がありサングラスをかけて仕事をするちょび髭の退職まじかのオヤジと転職したばかりの若者、そして当方の3人である。グループの運営その他を部下のマネージャー二人に任せて、半年間専念し、立ち上げた。
実は開発を始めた時のメンバーは、エリートに見えそうな優秀なメンバー二人だったが、一か月もしないうちにメンバーを入れ替えた。転職したばかりの若者にはかわいそうな仕事だったが、右も左も分かっていなかったので、グループリーダーの当方についてくる以外に道はなく、当方は職位のパワーを十分に発揮できた。
退職まじかのオヤジはグループ内で仕事をよくさぼっていたが、腕は確かだったので運を天に任せるつもりで引き抜いた(?)。このオヤジは案の定最初の一か月近くは、指示しなければ仕事をしないだけでなく、若者に自分の仕事をやらせていた。しかし、その様子を見ていて気がついたのは、さぼっているのではなく指導しているようにも見える。
そこである日このオヤジに若者の指導を任せるからと言って、開発メニューの全貌を説明したところ、「金もなくできるかどうかわからん仕事をよく進めますな」と言った。少しどきりとしたが、「だから土日は東京でK社と生産用混練機本体の開発を進めるが、これは予算を確保するまで秘密だ」と説明したところ、「よし、倉地さんを信じましょ」と言ってくれた。翌日からオヤジのサングラスの下の表情が変わった。
開発は半年しかない短期決戦で、さらに基盤技術も無い混練プラントを格安の価格にするためすべて手作りに近い立ち上げ作業だった。メンバー二人の頼りにしていたのは、当方がゴム会社で12年勤務したキャリアだった。当方はその大半をセラミックス技術開発の仕事をし、高分子の知識は写真会社で独学で身に着けただけだが、それを隠した。一流のゴム会社の看板の凄さを体感した開発だった。仕事は順調に進み、一億円もかけずに無事プラントは立ち上がった。
カテゴリー : 高分子
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