2017.07/25 科学の体系(4)
ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術は、用いた界面活性剤をその体系の中で考えている限り、完成できない技術である。あるいは勉強不足のK大の先生のように当たり前の現象の技術と誤解する。
すなわち、ゾル粒子へ高分子が吸着する現象として捉え、高分子の吸着した粒子が安定なミセルを形成していると考えない限り実用化できない,界面活性剤の体系から少し離れた高分子の吸着現象の技術である。
これは界面活性剤の科学の体系の特別な現象という説明もできなくもないが、界面活性剤の教科書を読んでいては簡単に見出すことができない技術と考えたほうがよい。界面活性剤の科学知識を一瞬忘れて現象を眺めてみて初めて発見できる技術で、実際にそのようなプロセスで誕生している。
この例以外に、界面活性剤の科学と樹脂やゴムのブレンドにおけるコンパチビライザーの考え方について比較をしてみると面白い。例えばAという樹脂とBという樹脂を安定にブレンドしたければ、コポリマーABをコンパチビライザーとして用いる。
このあたりは、水と油を混ぜるときに用いる界面活性剤の構造の考え方と似てくる。しかし、混練ではミセルという考え方を用いていない。ゆえに全く異なる体系のように思われるが、混練で用いるコンパチビライザーを界面活性剤のような考え方で捉えてもよいし、逆に水と油の混合を混練と同じように考えることも技術開発において現象を眺めるときに必要となってくる。
このとき、よく勉強をしている人は、このような人を「科学を知らない人だ」と決めつけたりするが、技術開発で重要なのは現象からロバストの高い技術を取り出すことであって、真理を極めることではないのだ。科学に囚われるあまり、現象の多様な把握がうまくできずアイデアを出せない状態は技術開発の現場で排除すべきである。
科学は現象を理解する一つの方法に過ぎない。とんでもない妄想が自然界の現象から機能を取り出すヒントになるかもしれない。ノーベル賞学者でも妄想で成功している人がいる。科学は無用ではなく科学があるおかげで目に見えない世界の妄想を描くことができていることも付け加えておきたい。
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