2017.08/01 アブラミの指数(6)
アブラミの指数については均一核形成と不均一核形成で指数が異なる。均一核形成では、三次元的であれば4、二次元的であれば3、一次元的であれば2となる。これが不均一核形成になると、それぞれ3,2,1となる。
しかし、昨日述べたように、高分子の結晶成長において一次核形成過程を無視できない。論文でよくt0.5の条件でアブラミの指数を求めたりしているが、PEなどで議論された結果をみると、結晶成長の20%以下すなわちt0.2とかt0.1あたりで求めたほうがよいように思われる。
無機材料でアブラミの指数を求めると比較的きれいな値が得られるが、高分子では、整数値が得られていない事例が多い。そもそも高分子の融体からの結晶では球晶となるが、この球晶が最初から球晶を目指して結晶成長しているのではなく、一次核形成過程ではラメラ晶となっており、ラメラ晶の表面にできた二次核からさらに結晶成長している場合もあるのだ。
高分子の複雑な球晶の構造を思うときに、安直なアブラミの指数を求めて議論を進めるのは誤解のもとである。またアイデアをつぶす原因になる場合だってある。
例えばPPSの融体は、複雑な挙動を示す。すなわちPPSの混練状態で溶融結晶化温度が2-3℃ずれるだけでなく、その結晶化速度も変化することを確認している。
さらにカオス混合で6ナイロンを7%相溶させたPPSを急冷すると球晶がすぐに現れないので極めて靭性の高いフィルムが得られ、複写機の高速稼働するベルト部品として実用化されている。
カテゴリー : 高分子
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