2017.08/22 自然界から有用な機能を見出す
科学による自然との対話で多くの人類に有用な機能が導き出された。あるいは、その研究過程で偶然発見されたりした機能もある。
20世紀の技術開発競争は、この新機能の発見競争でもあった。そのため、科学で解明されていない現象が多かった時代には、科学的な基礎研究が重要だった。
ところが、20世紀末には、材料科学はじめ多くの分野で科学が進歩しアカデミアでは研究テーマを探す時代になった。あるいは、多くの分野で科学の体系がほぼできあがった、というのが21世紀の科学の状況ということもできる。
しかし、自然界には人類に役立つ未発見の機能がまだ存在している可能性があり、アカデミアの研究テーマには出来上がった体系を見直している研究も存在する。
この未発見の機能を企業の研究者あるでいは技術者が、経験知や暗黙知を使ってうまく見つける方法を獲得しているならば、わざわざ科学の体系を作り直すような研究は企業で不要である。
話題は大きく飛んでしまうが、少女漫画に胸キュンしぐさというジャンルが存在する。2014年に流行語大賞をとった「壁ドン」はその一つだが、そのほかに、腕ゴールテープ、カーテンの刑、俺コス、肩ズン、ねじポケ、頭ポン、顎クイ、なろ抱き、耳ツブなどがあるそうだ。
書店で漫画を手に取り、胸キュンしぐさを探してみたが、予備知識が無ければ多くは見いだせない(注)。まさに未発見の機能を見つける作業とはこのようなものかもしれない。NHKの意味を知った時には、iPSの命名について聞いた時と同様の感動があった。
(注)少女のすべてが同じしぐさに胸キュンするわけではないだろう。自己の経験、あるいはあこがれや夢と漫画に表現されたしぐさにシンクロしたときに胸キュンが起きるそうで、漫画家は一部の少女たちの支持を想定して新たな胸キュンを考え出すのだそうだ。男女が群れで活動していた世代には理解できないシチュエーション(科学の今の体系では理解できない現象と似ている)が漫画に描かれているが、新たな胸キュンしぐさを発掘する作業は、科学ですべてが理解されつつあると誤解されている自然界から、新機能を見出す作業に似ていると感じた。イノベーションを起こすことができる技術者は、自然界の新機能に胸キュンするのである。
カテゴリー : 一般
pagetop