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2013.02/20 弊社の問題解決法について<34>

山中博士は、この幸運を逃がさないために、続けて同様な非科学的プロセスで実験を進めてゆきます。二十四個の遺伝子から1個を取り除いた二十三個の組を細胞に入れ、iPS細胞ができなかったならば取り除いた1個が必須の遺伝子である、という消去法的方法で実験を進めているわけですが、この方法では、取り除いた1個の遺伝子の機能があらかじめ科学的に証明されている必要があります。

 

しかし、その証明がなされていない段階では、遺伝子間の交互作用について確認の実験を行って、論理を緻密に展開しながら四個の組を選び出すのが、いわゆる科学的な進め方です。この実験では、二十四本のくじの中から当たりくじはどれかと、一本一本引きながら、結局全部引いたような実験になっています。くじの引き方としてみても節操がないように思われます。

 

実は二十四個の遺伝子の任意の組み合わせから四個の組み合わせを選ぶ、という単純な実験を科学的に行なった場合には、順列組合せの公式を用いて計算すると10,626通りの実験が必要となります。10,626通りの組み合わせ実験で一つ一つ細胞を初期状態にリセットできるかどうかを確認して初めて科学的に検証された、と言えるのです。

 

以上説明しましたように、科学的に進めたならば膨大な実験が必要なプロセスであったはずですが、山中博士は、答えと決めた二十四個の遺伝子の中から最低限必要な遺伝子をただ探すだけ、という単純化された非科学的プロセスを採用して作業効率をあげ成功に至っております。

 

生化学分野は専門外なので邪推になりますが、テレビ番組の説明を聞く限りでは、もし科学的に探索していったならば、iPS細胞を作り出す遺伝子の組み合わせは、まだ他にもみつかるのではないかと感じました。ただ、それには膨大な実験が必要であり、何年後に見つかるのか予測がつきません。大人の細胞で行う再生医療は、夢の技術であり、その実現は人類の幸福につながります。iPS細胞発見に向けて科学的プロセスを捨て、ヒューマンプロセスで果敢にゴールへ挑戦し、短期間で目標を達成した山中博士に、ノーベル賞は早すぎた受賞ではありません。

 

そしてこの山中博士のノーベル賞受賞で私たちが学ばなければならないのは、科学的大成果を出すために科学的なプロセスが必要ではなかった、という事実です。科学的大成果であっても、そこに至る道筋について科学的であることに拘る必要は無い、ということです。これは一般の問題解決プロセスにおいても科学的手法にこだわる必要は無く、非科学的方法で構わないことを示しています。

                            <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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