2017.08/28 技術開発の方法(6)
昨日まで2日にわたり書いてきた電気粘性流体の増粘問題について、それが解決され、さらに実用的な性能まで改善された仕事の流れを公開されている特許から再現できる。
アジャイル開発の手法を実務でどのように実行していたのか、当時の具体的な仕事の流れで書いてみる。
当時、高純度SiCの事業化を推進していたのは当方一人だった。電気粘性流体の増粘問題が発生したときには、住友金属工業とのJVの話が持ち上がり、一人でサンプル生産をパイロットプラントで行っていた。この住友金属工業との業務成果は半導体用冶工具の技術に関する発明が当方含め4人による共同出願として公告されている。
電気粘性流体のプロジェクトリーダーが、高純度SiCの試作プラントまで尋ねてきて、新しいゴム開発を行いたいからテーマを中断して手伝え、と言ってきた。かなり強引だった。
担当業務の状況を伝えたところ、本部長の許可を得ている、と回答が返ってきた。それはおかしい、この仕事は社長の許可で推進(注)している、と回答したら、0.5工数だけ裂けば良い、となった。基幹職でありながらずるい交渉の仕方である。
それでは、手伝う代わりにこれまでの検討資料を見せて欲しいとお願いしたら、ゴム開発だけやれば良いからプロジェクトの資料など理解しなくても良い、と乱暴なことを言ってきた。
ここまで乱暴な扱いをされたのはゴム会社で初めてだったが、企業における研究開発のシーンでは似たようなことが起きているのではないか、とその後の実務経験から感じている。例えば、ここまでひどくなかったが、やはりただ手伝うだけでよい的な仕事の依頼をしてきたマネージャーが写真会社でもいた。
自分の担当が重要テーマに位置づけられると、全社の視点で考えることのできないダメなマネージャーは、このような行動になる。担当者は自己の使命を忘れてはいけない。もし悩ましい状況になったら、第三者の管理職なり役員に業務の相談をすべきである。大会社では時として重要なテーマがこのような形でつぶれることがある。(続く)
(注)高純度SiCの業務は当方が無機材質研究所へ留学中に社長の前でプレゼンテーションを行い、先行投資が決まったテーマである。そして年一回の社長診断では必ず社長がパイロットプラントまで訪ねてきてくださった。ファイアーストーン買収後もこのテーマだけは続けたいと申されたのだった。研究所では四面楚歌であったが、事業として立ち上がるまで必死で推進し、住友金属工業とのJVまで実現したのである。
カテゴリー : 一般
pagetop