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2017.09/11 技術開発の方法(14)

(9/9続き)酸化スズゾルには帯電防止層を設計できるだけの導電性があるが、超微粒子で水に分散しているため、何も工夫しなければパーコレーション転移が起きにくい。酸化スズゾルを用いて帯電防止層を製造するためには、パーコレーション転移を起きやすくする技術とパーコレーション転移の閾値を評価する技術が必要になる。

 

技術開発において、機能がうまく動作するかどうか評価する技術は重要で、基盤技術が整備されている企業では、常にそのメンテナンスが行われている。ゴム会社はその典型で、アカデミアよりも評価解析技術のレベルは高かった。しかし写真会社は特公昭35-6616の例が示すように技術の継続性すら無い会社であり、既存商品の品質評価ができる程度だった。原因は20年勤務して十分理解できた。

 

さて、十分な評価技術が無い会社では、評価技術開発のオブジェクトが新しい技術の開発で重要となってくる。新しい機能がうまく動作するかどうかは、それを評価できる技術が無かったら確認できないからである。故田口先生も基本機能とそれを評価する技術の研究が大切である、と述べられていた。

 

フィルムの帯電防止技術は写真会社の基盤技術のはずだったが、評価装置の大半が倉庫に眠っていて、表面比抵抗測定器と電荷減衰計測装置が使われている程度だった。パーコレーションを評価できそうな装置を探したが無かった。帯電について書かれた教科書にもあたったが、使えそうな評価方法は書かれていなかった。

 

奇妙に思ったのは、評価装置のすべてが、放電現象を直流に見立てて作られていることだ。電気には交流と直流があり、なぜ交流的な放電を前提にした評価装置が無いのか疑問に思った。

 

このような疑問は考えているよりも実際にフィルムのインピーダンスを計測すればよい。そこでフィルムのインピーダンスを測定したところ、パーコレーション転移の閾値と低周波数領域のインピーダンスが関係していることなど様々なことがわかった。疑問に思ったことは、すぐにアクションをおこし解決することは大切である。

 

実験も重要だが調査も重要なアクションの一つである。ところが何故と考える前にアクションを起こせる技術者が少ない。アクションの内容は疑問と開発のゴールで決まってくる。この時頭をあまり使わないという意味で技術者は体育会系である。

カテゴリー : 一般

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