2017.09/08 問題をどのように解いたのか(技術による解法1)
電気粘性流体の増粘の問題を研究したメンバーは、構造が明確な界面活性剤をHLB値のすべての領域で集め、分子構造との関係も議論したにも関わらず、なぜ問題を解けなかったのか。その原因はサンプルの集め方にある。すべての領域のHLB値について集められたからといっても、その条件で界面活性剤のすべてが集められたことにはならないからである。
科学の議論で現象を述べる時に、現象を代表するサンプル群は重要であり、そのサンプル群を定義するパラメーターの客観性と普遍性、汎用性が問題となる。そしてサンプル群が誤差として広がりを持っているならば、その広がりを定義できるパラメーターまで記述できなければいけない。
しかし、技術では、それらのパラメーターが仮に不明であったとしても、界面活性剤が機能し十分なロバストを確保できるだけで良い。界面活性剤の分子構造や純度その他の特性がブラックボックス化されていても、安定な機能さえ得られれば良いのである。仮に安定な機能に制約があったとしても、市場で用いたときに、その制約条件が無関係であれば、実用化できるのである。
また、技術はそのようにして科学成立前には発展してきたのである。科学と技術を結び付けて技術開発を行ったのは産業革命以降で20世紀後半になってその結びつきは強くなった。19世紀以前には仮に科学が存在しても科学を無視した技術も多く開発されている。また当方は意図的に科学を無視して技術開発することもしばしばある。
当方がこの界面活性剤の問題を解決するにあたり、界面活性効果のありそうな材料、すなわち水や油に添加するとその表面張力を変化させる可能性のある材料を片っ端から無作為に集めた。集められた材料には界面活性剤と呼ばれていないものや、界面活性剤と呼ばれていても構造や組成が不詳の怪しい材料も含まれていた。
すなわち、およそ科学の研究では対象として選ばれない界面活性剤も含めて検討したのである。そのため、見つかった界面活性剤は、HLB値こそカタログに載っていたが、分析すると多成分の混合物で、何が効いているのか分からない状態だった。もっとも効果の高かった材料が問題解決用に採用されたのだが、効果は若干落ちるが実用性のある材料もいくつか見つかった。その結果を見ると、検討した界面活性剤よりもまだ効果の高い材料の存在が期待された。
カテゴリー : 一般
pagetop