2013.02/26 弊社の問題解決法について<40>
ニュートンにつきましては、リンゴが落ちるのを見て万有引力を発見した人物として有名ですが、リンゴではなく「月が地球に落ちてこないのはなぜか」という問いを「マッハ力学史」では考えたことになっています。すなわち、「身の回りの物は地球の重力により落下するが、月はなぜ落ちてこないのか」、という問いを考え続けたそうです。
マッハは、ニュートンの思考過程を彼の業績と彼以前の学者の業績を示しながら説明し、非科学的な思考ではあるが科学的な成果を出した優れた方法と評価しています。ここでは、マッハ力学史を参考にして、伝説に従い身の回りの物をリンゴに置き代えてニュートンの思考過程を想像してみます。
(1)満月の夜、リンゴの木を見つけたニュートン。
(2)そよ風が吹いて、リンゴが木から落ちた。
(3)リンゴが落ちたのは、リンゴを木につなぎ止めていた力が弱かったからだ。
(4)しかし、満月は、なぜ地球に落ちてこないのか。
(5)ニュートンは、リンゴを拾い上げ、ヒモをリンゴにとりつけ振り回している姿を想像する。
(6)振り回す速度を速めていったら、恐らく遠心力でヒモからリンゴがはずれ、リンゴは月明かりの中に飛んで行くだろう。
(7)月が地球の周りを回っているのは、遠心力と釣り合う力が働いているためだ。
(8)この遠心力と釣り合う力を地球の重力と考えよう。
(9)ところで地球に重力があるならば月にも重力があるはずだ。
(10)お互いが引き合って、遠心力とバランスを取っているのだろうか。
以上は筆者の推測ですが、満月に向かって真っ赤なリンゴが黒い影となり飛んで行った時に万有引力が発見された、という絵画的なシーンを思い浮かべながら思考実験の様子を描いてみました。
上記の手順で本当にニュートンが考えたかどうかは不明ですが、マッハは、彼のこのような思考過程を非科学的と批判しつつも、現象を考察する時に用いた思考実験を称賛しています。そして、このニュートンの思考実験の方法をアインシュタインに紹介し、相対性理論の発見へ彼を導いています。
光の速度で運動している物体をあたかもその場で見ながら考えるという実現不可能なことを考えたい時に、思考実験は使えますので、「考える技術」として大変便利な方法です。すなわち、たとえ非科学的ではあっても、思考実験を使えば現実に実験できない現象までも頭の中でシミュレーションすることができ、架空の観測結果から予想外のアイデアを生み出せる可能性が出てきます。
ところで、ガリレイやニュートンの思考方法に共通しているのは、経験や観察結果を活用する非科学的な思考方法であるにも関わらず科学的成果を導いている点です。そして、その成果を生み出す動力となりましたのは、whyからhowへの発想の転換や思考実験など現代にも利用できそうな方法です。彼らの思考方法をこのように評価しますと、17世紀頃にアイデアを生み出す動力となる「考える技術」が誕生し現代まで伝承されてきた、と言って良いかもしれません。
<明日へ続く>
カテゴリー : 連載
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