2013.03/02 弊社の問題解決法について<44>
逆向きの推論は、結論から推論を展開する方法ですが、この考え方を研究開発に応用しますと、開発中の技術を市場でテストしながらアイデアを練る、という少し乱暴とも思える開発スタイルも考えられます。すなわち市場という結論に相当する場に未完成の技術を投入し、そこから研究室で開発すべき課題を推論する、という方法です。
最先端の事例を紹介すれば、ロボットの人間らしさを研究している大阪大学石黒浩教授は演出家平田オリザ氏とコラボレーションし、1台のロボットを役者として演劇に参加させ、観客の反応を探る取り組みをしています。近い将来アンドロイドが人間の生活の中に入ってくるのは予想されます。そのような未来に備え、前向きの推論を積み重ね人間の生活へ指向するのではなく、研究の初期から、ロボットを人間社会に投入し、試行錯誤を繰り返し作り上げてゆく取り組みです。
人間社会におけるロボットの動作に関し仮説を設定し、前向きの推論を展開して人間社会におけるロボットのあり方について研究してゆくのではなく、いきなりロボットと人間が共存する場で研究をスタートするのは大胆でありますが成果を得るスピードは速くなります。なぜならば、アンドロイドのゴールが人間社会なので、人間社会のモデルである演劇の舞台から得られるデータは、ゴールに直結したデータとなります。
テクノロジーだけで人間の繊細さを表現できない段階において、このような取り組みを行うのは、研究者と演出家にとりましてリスクが大きいですが、人間の表情や動作などで表現される繊細さをロボットで再現するために要求される動作の制御に必要な精度のレベルがわかった、と石黒教授は話されています。
このようなデータは実験室で前向きの推論を積み重ねる研究でも得られるでしょうが、1回の上演で成果が得られるスピードに追い付けません。この例のように不確実性の時代には、リスクよりも解決策の得られるスピードを重視した、ゴールに直結したアクション戦術が今後増えてゆくかもしれません。
<明日へ続く>
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