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2013.03/04 弊社の問題解決法について<46>

1991年にライバル会社から、シリカゾル一粒の粒子の周りをラテックスで包んだ複合構造の微粒子技術に関する特許が公開されました。その微粒子技術を用いた銀塩写真フィルムは30秒という短い時間で現像処理できます。

 

従来は、シリカゾルという硬い超微粒子とラテックスとをゼラチン水溶液に添加し、それをフィルムに塗布して感光層を作っていました。ライバル会社の技術は、シリカゾルという硬い超微粒子をコア(核)としてその周囲をラテックスで包む(殻、シェル)という複合粒子の形態でゼラチン水溶液に添加していました。

 

そのゼラチン水溶液で薄層を形成しますと、柔らかいゴムで包まれた硬い粒子の複合構造による効果で、ゼラチンに硬さとしなやかさを持たせることができました。その結果、現像処理時間を短くしても、擦り傷がつきにくく乾燥時のひび割れも起きにくくなりました。

 

ライバル会社の用いた複合粒子は、ラテックスがシェル(殻)のように粒子を覆っているのでコア・シェルラテックスと呼ばれていました。この製造技術は、当時のラテックス合成技術の中でも難易度が高く、合成例が学会で活発に議論されていた先端技術です。また有機無機ハイブリッド材料として業界紙でも多数取り上げられていました。

 

コア・シェルラテックスを分散したゼラチンは、それまでのシリカゾルとラテックスを分散したゼラチンに比較し脆さを大幅に改善できましたが、その効果が発揮されるメカニズムは、超微粒子の周りをゴムのラテックスが覆っているので、シリカゾルの凝集体ができないためである、と言われております。すなわちシリカゾルとラテックスを別々にゼラチンへ分散した時に、シリカゾルの一部で凝集が起き、そこが起点となってひび割れが起きるため、従来の技術では脆さを改善する技術に限界がありました。それをライバル会社は複合構造の微粒子でイノベーションを起こしたのです。

<明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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