2017.10/29 (フィラーを用いた高分子の機能化)科学の世界における誤解(4)
(昨日の続き)実は高分子を高機能化するためのフィラーの表面処理技術は20世紀に出そろった。また各種導電性フィラーも市販されている。たとえばカーボンナノチューブも20世紀の遺物である。
ゆえにフィラーの導電性を損なわないような表面処理ができれば、あとはバインダーである高分子とプロセシングの工夫をすればよいだけである。
1990年代にすでにこのような状況だったが、パーコレーション転移という概念が浸透していなかったので一生懸命フィラーの探索をしている技術者が多かった。
このような状況で、パーコレーション転移の概念を半導体高分子の分野に持ち込み、昭和35年に開発された酸化スズゾルを用いて、高分子バインダーとプロセシングの工夫で写真フィルム用帯電防止膜を開発し日本化学工業協会から技術特別賞を頂いた。
フィラー(分散質)では無く、それを分散する分散媒とプロセシングの工夫がミソである。酸化スズゾルを用いたことに新規性はなく、バインダーとその形成過程を制御し、機能を実現した技術(技かもしれない)が評価されたのだ。
酸化スズゾルという導電性フィラーは子供の頃に開発された材料だったが、その導電性について疑いがもたれていた。しかし38歳の時に写真会社へ転職し実験室の隅に放置されていた酸化スズゾルの導電性を評価してびっくりした。1000Ωcmだったのだ。
しかし、それを評価した担当者は絶縁体だといった。物性評価の仕方が悪かっただけだが、この続きは明日述べる.
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